第5話 欲するなら

あのあと

何も言えずに帰った


帰り道なんて覚えていないはずなのに


やはり

なんどもギガと帰ったからだろうか


夢中に走っていると私は

自分の家に帰ってきていた


「おかえりララ…」


何か聞こえたような気がするが

今だけは知らないふりをする


自分の部屋にこもり

流れるようにベッドに倒れ込む


やはり私はギガがいないと…


明日学校に行ったら謝ろう


そうしたら今度は

ちゃんと頼むんだ


そしたら今度は

仲良くできるk…



―久しぶりですね

ラララ―


「ギガ…?」


ギガはもう壊れたはずでは…?


でもそんなことはどうでもいい


目の前にギガがいる

その事実だけでラララには充分だった


「ギガ…

もういなくならないで…

ずっと怖かったよ…」


―大丈夫―


その声は次第に遠ざかっていく


―私はいつでもあなたのそばにいます―


「いかないで!

ギガ!」


必死に手を伸ばす


声のする方へ全力疾走をする


だがその努力もむなしく

ギガの声が小さくなるのを止められない


―欲するなら手を伸ばしなさい―


「やだ!」


―進みたいなら前を向きなさい―


「待ってよ!」


次第に足が重くなり視界が狭まる


―ラララなら大丈夫―



「ギガ!!!」


そこでラララの意識は覚醒した


静寂


時計の秒針の音だけが室内を満たしていた


そうか…

帰ってベッドに倒れてそのまま…



時計を見ると

時間が一時間ほどたっていた


そこで先程ギガに言われた言葉を思い出す


欲しいなら手を伸ばす

進みたいなら前を向く


きっとそれは当たり前で

それでもみんな忘れてしまっていること


私は…


私は何がしたい?


きっとそれがわかれば

あの男の子みたいに強くなれるのかもしれない


そこでラララの母親はラララのことを呼ぶ


どうやらもう夕食の時間のようだ



会話という会話をしないまま食事は進み

食べ終えたところで母親が話を切り出した


「ラララ

最近学校楽しい…?」

「わからない…」

「お友達はできた?」

「わからn…」


―欲するなら手を伸ばしなさい―



「わからないけど…

友達…

できそう…」


それを聞いたところで

両親とも表情が柔らかくなる


「そうかそうか!」


少し興奮した口調で話しに割って入ったのは父親だ


「これもギガのおかげだな!」


お父さん…

嬉しそう…


なのにこの

少しだけ心にチクッっと来るのは何だろう…

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