第5話 欲するなら
あのあと
何も言えずに帰った
帰り道なんて覚えていないはずなのに
やはり
なんどもギガと帰ったからだろうか
夢中に走っていると私は
自分の家に帰ってきていた
「おかえりララ…」
何か聞こえたような気がするが
今だけは知らないふりをする
自分の部屋にこもり
流れるようにベッドに倒れ込む
やはり私はギガがいないと…
明日学校に行ったら謝ろう
そうしたら今度は
ちゃんと頼むんだ
そしたら今度は
仲良くできるk…
※
―久しぶりですね
ラララ―
「ギガ…?」
ギガはもう壊れたはずでは…?
でもそんなことはどうでもいい
目の前にギガがいる
その事実だけでラララには充分だった
「ギガ…
もういなくならないで…
ずっと怖かったよ…」
―大丈夫―
その声は次第に遠ざかっていく
―私はいつでもあなたのそばにいます―
「いかないで!
ギガ!」
必死に手を伸ばす
声のする方へ全力疾走をする
だがその努力もむなしく
ギガの声が小さくなるのを止められない
―欲するなら手を伸ばしなさい―
「やだ!」
―進みたいなら前を向きなさい―
「待ってよ!」
次第に足が重くなり視界が狭まる
―ラララなら大丈夫―
※
「ギガ!!!」
そこでラララの意識は覚醒した
静寂
時計の秒針の音だけが室内を満たしていた
そうか…
帰ってベッドに倒れてそのまま…
時計を見ると
時間が一時間ほどたっていた
そこで先程ギガに言われた言葉を思い出す
欲しいなら手を伸ばす
進みたいなら前を向く
きっとそれは当たり前で
それでもみんな忘れてしまっていること
私は…
私は何がしたい?
きっとそれがわかれば
あの男の子みたいに強くなれるのかもしれない
そこでラララの母親はラララのことを呼ぶ
どうやらもう夕食の時間のようだ
※
会話という会話をしないまま食事は進み
食べ終えたところで母親が話を切り出した
「ラララ
最近学校楽しい…?」
「わからない…」
「お友達はできた?」
「わからn…」
―欲するなら手を伸ばしなさい―
…
「わからないけど…
友達…
できそう…」
それを聞いたところで
両親とも表情が柔らかくなる
「そうかそうか!」
少し興奮した口調で話しに割って入ったのは父親だ
「これもギガのおかげだな!」
お父さん…
嬉しそう…
なのにこの
少しだけ心にチクッっと来るのは何だろう…
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