第4話 遠ざかっていく

不思議だ


きっと目の前の男の子が話をリードしてくれているからだろう


他の人よりずっと話しやすい


ギガがいなくても

この人がいつも隣にいてくれたら…


「ちょっとそれ見せてくれないか?」

「…?」

「ギガのことだよ」


だめだ


やはりまだ会話ができない


考えることができなかったり

逆に考えすぎて口に出すことができなかったり


どちらにしてもうまく話せていないことに変わりはなかった


「ちょっと取るからな」


ギガが頭から離れる


取った瞬間涼しくて

そして頭が寂しくなった


いつもそこにある物がなくなってしまった寂しさだ


「んー…

どっかになんか穴とか無いのかー?」


思い返せば

こうしてギガを頭から外してじっくり眺めるのは初めてだった


ギガはあらゆる障害に対して万全に備えられており

機械とはいえ水に対してもかなりの耐久性能を誇るため

入浴中でも外さない


ギガも外さなくていいと言っていた


「なんだこれ?」


男の子が何か見つけたようだ



俺は内心興奮していた


興奮していると言うと

変態チックに聞こえてしまうが

断じてそういうことではない


だが好きな人が身に着けていたものが今自分の手の中にあるという事実に対して

少しばかりの興奮を覚えても罰は当たらないのではないだろうか?


これがラララさんがつけていた…なんて言ったか…?

ギガ…だったか?


やばい…

どうしよう…


…じゃなかった…


何か次の話に進むための手がかりを見つけないと…


気分は進まないRPG…


俺の家にはPCが置いてあるので

機械系統のものには強いというわけではないが

抵抗は少ない


どこかに情報を入力するための穴があればいいんだけど…


そこで俺はUSBが差せそうな穴を見つける


「なんだこれ?」


大きさはたぶん一緒だ

本当に差せるかどうかは実際に差してみないとわからない


しかしこれを安易に持ち帰るわけにもいかない…


どうしたらいいか


考えに考えた結果

俺は


「ギガ

俺ん家に持ち帰っていいか?」


普通にお願いすることにした


「だめ」


だめだった


「でも

もしかしたらギガをなんとかできるかもしれないんだよ」

「だめ…」

「なんで…」

「だめ!」


ラララはだめしか言わない


なんか…


そうだな…


こんな人だと思わなかったっていうか

なんというか


冷めたな



目の前の男の子は何を言っているのだろうか?


そんなことダメに決まっている


だって私はギガがいないと何もできない

ギガを取り上げられたら…


そういえばもう

ギガは返事してくれないんだった


やっぱりいいと言おうとして

男の子の目を見る


しかし

どう表現したらいいだろうか?


これが冷たい目

というやつなのだろうか?


なんで?


なんでそんな目で見るの?


やめて


やめてやめてやめてやめてやめて


何も考えられない


もう

いやだ


何もしたくない


何をしようとしてもうまくいかない


何も悪いことしてないのに

みんな…みんな…


遠ざかっていく

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