異世界新報

@solss14

また特級魔石……猛暑で違法取引に走る市民急増

ノア市第三地区で特級魔石を違法に取引していたとして、魔法省は暑月61日に男女3人を拘束した。同様の事件は暑月に入ってから12件あり、既に昨暑月の2倍も発生している。


事件の背景にあるのは、記録的な猛暑だ。ノータ国で大量発生したサラマンダーによって、我がリバ国を含む周辺国の気候に影響を及ぼしている。中でも、ノア市は寒冷地ということもあって、暑さに対応する文化がない。建物は防寒仕様なうえ、国民は厚い衣服しか所有していないのだ。この猛暑によって精力が奪われやすい環境にあることで、ノア市の保健所に入院した市民は記録的な勢いで増加している。


猛暑に対する有効な対策はあるものの、そのほとんどが氷の魔石に依存している。寒冷地であったノア市には元から在庫がほとんど存在せず、ノア市中の氷の魔石が店頭から早々に消えた。価格は昨暑月の5倍ほどに跳ね上がったが需要は全く落ちず、一度店頭に並べば半刻も経たない間に売り切れる状態だ。サンネ協会は氷の魔石の供給を全協会員に要請したが、抜本的な解決に至らず、市民は苦しい生活を強いられている。


これに便乗して、氷の魔石を法外な価格で取引したり、粗悪なものを押しつけたりする悪徳商人の被害が増加している。その中で、最も悪質なものは特級魔石を取引する商人だ。周知のとおり、特級魔石は魔力が極めて大きいため、誤った保管方法をとるだけで死人が出る危険なものだ。それゆえ、我がリバ国をはじめとした多くの国において、特定の魔導士と商人以外が扱うことは厳罰に処される。


しかし、未だに特級魔石を取り締まらない国も存在している。加えて――犯罪を教唆しないよう詳細は伏せるが――特級でも氷の魔石に関しては容易に扱う方法がある。これを利用し、秘密裡に特級の氷の魔石を入手したうえで、「合法魔石」「良質魔石」などと称して隠匿したうえで売買し、小遣い稼ぎする例は散見されていた。今回の猛暑で、それが加速した格好だ。


比較的安全とはいえ特級なので、事故の危険性は十分に高い。特級の氷の魔石が暴走したことによって、第二地区にある幼学校で教師・児童計17人が凍死した痛ましい事故があったことは記憶に新しいだろう。


サンネ協会は元凶のサラマンダーを減らすべく、今暑月57日にノータ国へ魔導士を派遣したと発表したばかりだ。魔導士の活躍もあって猛暑は緩和されつつあるが、それでもまだ不十分だ。魔導士各位がさらに太陽のご加護を受けられるよう、我がリバ国民が結託して祈りを捧げることが肝要だ。


(編集――アフレ新聞/ムタ)

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