第16話


 見渡すばかりの美男。

 ここは天国だろうか?

 横一列に並んだ男性たちをシャルルが紹介した。

「この国の序列第二位のリュカ」

「よろしくね、ララ」

 名前を呼ばれてニコッと笑うのは、先程吹き飛ばされた美男子。ララに向かって手をひらひらと振る。

 シャルルはギロリと彼を睨み「呼び捨てをするな」と唸った。

「こっちが第三位ラウル。宰相をしている」

 次にララを“天使”と評した利口そうな男が会釈する。

「第四位クラリスと第五位セザールはそれぞれ黒の騎士団と赤の騎士団団長だ」

 ララと歳の変わらなそうな二人の少年が「うっす!」と声を上げた。寡黙そうな男がクラリス、明るく朗らかな男がセザールだと言った。

 ララはそれぞれにペコリと頭を下げる。

「よろしくお願いします……!」

 少女の微笑みに辺りはほわん、と和やかな空気が流れ、シャルルの仮面の奥の瞳も柔らかく細められた。


「──それで、魔王陛下。この生贄をどうなさるおつもりで?」

 最初に我に返ったラウルが疑問を投げかけると、柔らかかったシャルルの目が鋭く釣り上がる。

「生贄だと?やめろ、またララが誤解するだろう」

「は?ですが──」

 魔王の苛立ちを感じて怪訝そうな顔をするラウル。騎士団長であるクラリスとセザールも不思議そうに首を捻った。

「──ララは俺の花嫁だ」

 主人の言葉に五人全員が目を点にする。そして直後、ラウルは頭を抱えてふらりと倒れかけた。

「は、花嫁……?人間を……?」

 白目を剥きそうなほど動揺するラウルに、リュカは面白そうに口笛を吹く。

「これは想定外だね。ペットじゃなくて花嫁なんだ」

 眉間に皺を寄せたクラリスが額を押さえ「無謀にも程がある……」と呟けば、セザールは「すげー……」と瞳を輝かせる。

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