第10話
しばらく彼の気が済むまで抱きしめられて、名残惜しそうに私の身体を離す。
「俺の部屋の隣に君の部屋をつくらせた。気に入るといいのだけど」
首を傾げ、そう言ったシャルル。手を引かれてその隣の部屋とやらに導かれる。
その部屋は本当に豪華だった。豪華だけどゴテゴテしてはいなくて、とてもお洒落な部屋。思わず魅入っていると、隣の男は『待て』をさせられている大型犬のようにウズウズしている。
「……嬉しいです。とても素敵なお部屋ですね」
私がそう褒めると、ぱあっと顔を輝かせた。
私は天蓋付きの大きなベッドに向かうとその触り心地を確認する。ふわふわで心地良さそうだ。
「じゃあ、ゆっくり休んで」
そう言ってすぐに部屋を出て行こうとするシャルルに、私は声をかける。
「……シャルル様は、一緒に寝てくれないのですか?」
「えっ……」
私のことを“花嫁”だと言っていたのに、そそくさと出て行ってしまうのは何故か寂しかった。冗談混じりにそう言ってみれば。
「えっと……そんな……」
慌てふためき、今にも泣き出してしまいそうなほど狼狽える彼に
(悪いことしちゃったかな)
と反省する。口元を隠したシャルルが伏せていた目を左右に泳がせた後、こちらに向けて──。
「──好きな人の隣で寝て、何もしない自信はないけど」
熱のこもった、人を誘惑するような視線を送られる。
その強烈な瞳に、私はごくりと唾を飲んだ。
「冗談、ですよっ……!」
つられて照れた私に、ほっとしたような残念そうな……複雑な表情をする。
──可愛すぎないか。この男は。
「……ララが望むなら、いつでもそばにいる」
顔を赤くしたまま、キリッと顔を引き締めるもののプルプルと震えるのは隠せていない。私は思わずぷっと吹き出してしまった。
「ふふ」
彼も頭をかいて、ふにゃりと硬まっていた表情を緩める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます