第76話 行きたいところ

 旅行最終日。

 俺と双葉は旅館を出て、まったりと足湯に浸かっていた。


 二日目にあった話を語りたいのは山々だが、とても話せたものじゃない。


 早朝に柚葉を駅まで送り、そこから俺達は旅館へと戻った。

 ここから先は想像にお任せする。


 少しだけ説明するなら、我慢した後のエッチは気持ちよかったが、リミッターが外れた双葉がモンスターになった。

 これ以上は何も言えない。


 俺達の足はガクガクで寝不足だということだけ伝えておこう。


「この後どこ行こっか」


 お湯の中で足を伸ばしながら、双葉は俺の方を見る。


「行きたいところがあるから付いて来てくれるか?」


「行きたいとこと?」


「そうだ。今の俺達にピッタリなところを調べてきたからな」


「へぇ~」


 今日は俺達の付き合って一年の記念日。

 日付が変わった瞬間、三回戦を終えた後に『これからもよろしくね』と記念日を祝った。


 そんな特別な日に、俺はとっておきの場所をリサーチしている。

 特にオシャレなレストランを予約しているわけでもなく、もう一泊サプライズで用意しているわけでもない。


 これからの俺達が行っておいてた方がいいし、プレゼントを渡すのにもピッタリな場所。


 湯畑からすぐのところにある『光泉寺』


 ここは、『遅咲き如来』として、今まであまり花を咲かせられなかった人や、これからもう一花咲かせたいと願っている人へのご利益があると言われているお寺だ。


 Youtuberとして、これから花を咲かせたい双葉にはピッタリなところだ。


「まさか、ラブホとか連れて行かないよね?」


 ニヤニヤと俺の足をつついてくる双葉に、


「昨日……というか今日の朝まで散々ヤっただろ」


「可児くんは数時間経てば復活する人だと思ってるんだけど?」


「お前と一緒にするなよ? 俺は普通の人間だから」


「私を普通じゃない人間みたいに言うのはやめてくれる? れっきとしたヒューマン人なんだから私は」


 異世界人とまではいかないが、容姿も、体力も人間離れしているとは思う。全てにおいて双葉は規格外だ。


「楽しみだなぁ~。可児くんは私をどこに連れていってくれるんだろ~」


 俺の様子を伺いながら、双葉は棒読みで言う。

 何か企んでいることは既にバレているか。


 この見透かしたような笑み。俺を試しているようにも見える。

 多分、スピリチュアルなことが大好きな双葉はさぞかし喜ぶだろう。


 今年の年末も二人で初詣に行ったのだが、おみくじを引いて凶が出たときの落ち込み具合が激しかったり、人一倍念を込めてお参りをしていたからな。


 けれど多分、今の双葉は神様に頼みこむというよりも、自分の力で成功させてみせるから見守っててください、とでも胸を張って言うのだろう。

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