第75話 私も今日はシたいの我慢してるんだから

 このままではマズイ……俺の息子が起きる前にこの場から逃げないと。


「俺、のぼせそうだし先上がるから」


 ありがちな言い訳をして、俺は湯舟から上がる。

 顔が赤くなりそうなのは本当だからな。

 主に目の前で起きている百合が原因だがな。

 そっと立ち上がった俺は、2人の方に目をやる。


「あいよー」


 と、双葉は胸をイジられながらも俺に手を振った。

 柚葉は双葉の胸に夢中でこちらを見向きもしていない。


「お前ものぼせるなよ」


「大丈夫~、もしもの時は可児くんに助けてもらうから~」


「そうならないことを祈るよ」


 苦笑しながら言うと、そそくさとタオルを巻き直す。

 よし、今のうちに上がって着替えよう。


 そして、二人が温泉から出てくる前にトイレで一発出しておこう。

 そうしたら邪念から解放されてスッキリすること間違いなしだ。

 しなかったら、我慢の限界過ぎて寝れないかもしれないし、挙句の果てに夜這いとかしそうだ。


 こちらに意識が向かないようにゆっくりとドアの方へと移動する。

 音を立てないように、そっとドアを開く刹那、いつの間にか俺の背後に移動した双葉は俺の耳元で囁く。


「明日はニ人で夜を楽しもうね? 実は……私も今日はシたいの我慢してるんだから」


 甘い声と熱い吐息が鼓膜に響く。

 さりげなく背中に胸を押し付けて、少し荒くなった息遣いを首筋に感じる。


 しかし、後ろは振り向けない。

 振り向いてはいけない。

 何故なら、今の双葉の表情を一瞬でも見たら襲ってしまいそうだから。


「お、おう」


 だから俺は、そっけなく返事をすると、振り向かないまま部屋の中に入る。

 室内に入った瞬間、すぐにパンツとズボンを履いてしゃがみ込む俺。


「危っぶねぇ~!」


 反り立つ自分のアレを見ながら小声で叫ぶ。

 囁かれた瞬間、俺の息子は腰に巻いたタオルにテントを立たせていた。

 誰が見ても勃っているのが分かる状況だったから危なかった。


 双葉は俺のを見たとて「明日までお預けね?」とタオル越しに焦らして終わるだろう。そんなことされても、どうせ自分も濡れているくせにと思って俺も明日まで興奮を溜めておける。


 しかし、柚葉に見られていたら絶叫されていただろう。

 初めて見るであろう男のアレが、推しであり友達の彼氏のもの。トラウマになりかねない。


 部屋に入るのが少しでも遅かったら見られていたかもしれない。本当に危機一髪だ。


「こんなの我慢できるわけないだろ……」


 上裸のまま、俺はトイレへと駆け込み扉をバタンと閉めてカギを掛ける。

 そして、先程の興奮を保ったままズボンを下すのだった。



 ―――

 性剣の手入れが終わり、賢者になっている頃、浴衣に着替えた二人は火照った体を外で冷ましているのであった。

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