第71話 カニ⁉
「ま、ご飯食べたらなんか案が出るかもしれないし後で考えよ!」
と、ポテチを頬張る双葉。相変わらず呑気な奴だな。
それとも女子会ってこうゆうダラっとした雰囲気なのか?
もっと恋バナとか男子がいるところでしかできない話をしてワーキャーするのだと思っていた。
……って俺がいるから恋バナなどはできないか。まだ寝る前でもないし、てか彼氏俺だし。
「ご飯も急遽用意してもらってよかったな」
今日の夕食は旬のものと地元の名産を使ったコース料理。
一人前でもそれなりに準備が必要なのに、嫌な顔もせずに快く承諾してくれた。
流石高級旅館。流石接客業。
「一人だけコンビニ飯も可哀想だと思ってくれたのかな」
「ここまで来ておにぎりなんて食べて欲しくないんだろ多分。ポテチ開けてる時点でツッコまれそうだけど」
「本当は野宿&コンビニで8本入り100円の菓子パンと水でしのごうとしてたのに……感謝です……」
双葉と俺に両手を合わせて拝む柚葉。
柚葉はしっかりと礼儀がなっている子でよかった。
これで生意気な態度と身勝手な行動をされてたなら、俺は宿から蹴とばしている。
ちゃんと感謝されているし、もう柚葉については俺も何も言わないようにしよう。
せっかくならみんなで楽しみたい。
女子会に参戦して楽しくおしゃべりでもしようではないか。
俺を含めたとして、3人ですることとなると結構絞られる。思いつくのはゲームだったり、夜道を散歩してどこか面白そうな店に入ったり、そんな感じだ。
でも今日は外に出たくはない。
昼間に散々歩いたので双葉も疲れていると思うし、負担はなるべく軽くしたい。
長距離移動で柚葉も体はぐったりだろうしな。
「こうやってゆっくりしていると、なんか眠くなっちゃうねぇ~」
お菓子を食べながら、ウトウトし始める双葉。
「ダメですよ双葉さん! 今寝たらご飯が食べれなくなっちゃいます!」
「でもぉ……今日疲れたんだもん~」
「まぁ、寝たら双葉の分の夕食は俺たちで分けるとするか。双葉の大好物のカニも出るって聞いたんだけどな~残念残念」
「カニ⁉」
その言葉を聞いた瞬間、眠気が覚めて目を見開く。
「寝るんだったら俺と柚葉がおいしくいただくけどね」
「もう目が覚めた! そしてお腹も減ってきた!」
「双葉さん……そんなにカニが好きなんですね……」
異様な食い付きように、柚葉も少し引き気味である。
どんなお店に行ってもカニ料理があるなら双葉はそれを頼むくらいにカニが大好きだ。
この旅館を選んだのも、コース料理にカニがあったから。
サプライズにしようかと思っていたのだが、まさかこんなところでネタバラシすることになるとは……
双葉はそれくらい「カニ」が大好きなのだ。俺の苗字も「可児」だしな。
心の中でそんなしょうもないダジャレを考えてクスっと笑う俺なのだった。
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