第67話 今日も可愛いです!
「なんでこんなところに柚葉ちゃんが⁉」
俺に続いて振り向いた双葉は、ぎょっと目を見開く。
心の中では俺も双葉と全く同じ反応をしている。
なんでこんなところに柚葉がいるのか見当もつかない。
学校終わりにここに来るとしても早すぎるし、なんで俺たちの居場所を知っているのかそこから謎だ。
「今日学校来てなかったから心配したんですよぉぉぉ! だ天使ちゃん拝もうとしたら今日は休みとか言われて私頑張って探したんですからぁぁぁ!」
そう半べそ搔きながら言う柚葉は、そのまま双葉の胸に飛び込む。
「さ、探したってどうゆう風に? 私、ここに来るって誰にも言ってないんだけど……」
「お仕事で休んでるんだろうなと思って私も学校を休んで事務所に向かい聞き出しました!」
「それで聞き出せたんだ!」
「ちなみに誰が対応してくれたとか分かったりするか?」
横から俺は話に入る。
「なんか凄いおもてなしされちゃって、社長さんといっぱい話しちゃいました」
「やっぱりあの人か……」
どうしてこうも警戒心がないのか……あの人は。
いくらなんでも口が軽すぎるんだよ。
普通、押しかけて来たファンに居場所を教えたりなんてするか? いくら同じ学校の後輩だとしてもあり得ない。
もしヤバいファンだったりしたら命だって危ういんだぞ。
今すぐ社長に電話して怒鳴りたい気持ちが湧いてくるが、今は鎮めておく。
「じゃぁ柚葉ちゃんは私に会うためだけにここまで遥々来たってこと?」
「そうです! 今日のだ天使ちゃんも可愛いです!」
「……だ天使ちゃん呼びはやめてね?」
「す、すみません! ついテンションが高くなっちゃって!」
一度双葉から離れると、コホンと咳ばらいをする。
どこから来るのだろうかその行動力は。ただ会うために草津まで来るとか愛が強すぎるだろ。
こうして会ってしまった以上、絶対に会ってすぐにさよならなんて展開はありえない。
「ま、まぁせっかく来てくれたんだし、一緒にカフェくらいでも入る?」
この旅行で気が休まる時間がない。仕事の次はファンへの接待って……俺達にゆっくりイチャイチャする時間はないのか?
よりによって、予想もしていなかった柚葉の登場。中々の強敵はここにして登場してしまった。
普通のファンなら写真でも撮って帰らせればいいのだが、柚葉はそうはいかないからな。
双葉と友達になった関係だし、少しくらいは時間を取ってあげてもいいかもな。せっかくここまで来たのにすぐに帰すのはなんか申し訳ない。
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