第61話 ……世話のかかる美少女アイドルだよ
「資料今送っといたから。ま、そんな事だからよろしく~」
ノートパソコンを閉じると、俺に手を振りそのまま社長は事務所を後にした。
「……ったく、あの人は」
たまにぶっ飛んだことを言ってくるのが癪に障る。この前は避妊しろとか言ってきたし、今回は動画を撮るなだ?
撮るわけないだろ!
双葉の炎上を間近で見てきた俺がどうやったらその思考になるんだよ!
大きくため息を吐くと、俺は双葉の隣のデスクに座る。
結構な大声で話してたのにも関わらず、双葉は気にせず夢の中に居た。
「ホント、可愛い顔してるよな」
長いまつげにプルンとピンク色の唇。スラリと伸びる鼻筋。誰もが羨む美少女そのものの顔立ちだ。
まるで天使が寝ているようだ。
そんな顔を眺めながら、いたずら心が働いて鼻の先にちょんと人差し指を当ててみる。
触れたのに気づいたか、寝ながらも「んん~」と可愛く唸り、鼻を腕に擦り付ける。
「さて、俺も頑張ろうかな」
双葉をこのまま構っていたいのは山々だが、俺も仕事がある。
先程社長に送られてきた資料を開くと、一語一句読み返す。
今回の舞台は温泉街。
群馬県草津市の温泉宿に二泊して、温泉に入りつつ街をブラブラとする。
もちろん台本なんてない。
あくまでオフの日にカメラを回しているというだけの前提。
これなら双葉にも負担はかからないだろう。
いくらご褒美企画とはいっても、撮影は撮影。
しかし、カメラを回さなければただの温泉旅行になる。
撮影を優先して終わらせ、あとはのんびり双葉と過ごそう。
頑張りすぎている双葉をたっぷりとこの温泉旅行を満喫してもらう。
これが俺の目標だ。
あとはそうだな……何かサプライズでしてあげよう。
もうすぐ付き合って、丸1年だ。
日程を記念日に調整して、サプライズを決行。
プレゼントももちろん用意する。
仕事をやりつつも、双葉のことを優先して考えよう。
「……可児くん好きぃぃ……うぅ――」
パソコンにサプライズの計画を書いていると、横から双葉の寝言が聞こえる。
夢の中まで俺のことを考えてるのか。
「……世話のかかる美少女アイドルに溺愛されちまったよ俺は」
アイドルを辞めても、俺の中で双葉は人生に欠かせないたった一人のアイドル。
ボソリと俺は呟くと、幸せそうに眠る双葉の頭を撫でるのだった。
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