第55話 お見通し


「もっと欲を言うと、このままエッチしたいんだよなぁ~」


 唇を舌でいやらしく舐め、胸を押し付けながら誘惑する。


「だから、ここではダメだって社長に言われてるじゃん」


「ちょっとくらいしてもバレないってぇ~」


「分からないぞ、あの人ここを何かで監視してるかもしれない」


「……監視カメラとか仕掛けてあるかもね」


「だろ? だからヤるなら移動だ」


 何個もこの部屋にはカメラが仕掛けられてそう。ドッキリ番組のように。

 見られる見られてないの問題以前の問題だがな。

 ここでシたら条件に反してしまう。


「可児くんはシたい? 私と」


 服の袖をちょんちょんと引っ張りながら上目遣いでこちらを見てくる。


「逆にシたくないとでも?」


「疲れてるからいいやーとか言いそう」


「ヤったら回復するからいくらでもできるわ」


「そう来なくっちゃ!」


 と、双葉は立ち上がると、ルンルンで荷物をまとめてホテルに向かう準備をする。

 今日はお疲れさま会ということで盛り上がりそうだな。

 ジュースとかお菓子を買っていかなければ。

 俺も荷支度をしていると、


「おっす~。配信お疲れ様~」


 突然ドアが開くと、コンビニの袋を持った社長が部屋の中に入ってくる。


「お疲れ様です」


 ペコリと頭を下げる俺に対して、


「おつ~、私達もう帰るけどなんか用?」


 バッグを背負い、今すぐにでも部屋を出ようとする双葉。


「ちょまち~! 差し入れ買ってきたから持って帰ってくれたまえ~」


「えなにこれ」


「差し入れ~。すぐ使うものが入ってるから貰ってくれ~」


 半ば強引に袋を双葉に渡す。


「すぐ使うものってなんだ―――っっ!」


 袋の中身を見た瞬間、ボッと顔を赤らめる双葉。


「ほれ、すぐ使うものだったろ?」


 ニヤけながら言う社長に、


「余計なお世話!」


 袋を社長へと突き返す。


「次同じような事したらここも前の事務所も裏のこと全部暴露してやるからな!」


 そして、そのままぶつくさと愚痴を言いながら部屋の外へ出てしまった。


「あちゃ~怒らせちゃったか~。ちょうどいい差し入れだと思ったんだけどな~」


 戻された袋を眺めながら、呟く社長。


「一体何を買ってきたんですか」


「まぁまぁ。それはいいから受け取ってくれよ。中身は多分30分後には使うものだと思うからさ」


 と、俺に袋を渡してくる。


「そんなすぐに使うものって――あ、お見通しってわけですね」


 袋の中身は、ジュースが3本とお菓子が何個か細々。そしてコンドームが2箱。

 多分、ゴムを渡したくてきたなこれ。


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