第54話 復活のパワー



「今日の配信はここまで! 来てくれてたみんなありがとぉぉ~! ていうことで次回は来週! ふたバーイ!」


 一時間後、配信はキメ台詞と共に終了した。え

 初回配信ということで、アンチがこれでもかと湧くかと思ったが、それは前半だけで、後半からは平和に進んだ。


 どちらかというと、双葉を支持する人が増えた。

 その理由も、誹謗中傷に対する双葉の言葉がみんなに刺さったからだろう。

 アンチコメやその他批判、暴言など日常茶飯事すぎて誰も気にも留めない。誰かがそれが原因で命を絶ったとしても、大抵の人が2~3日で忘れてしまう。

 そんな心ない社会を、双葉は配信を知らせた。

 誹謗中傷など日常ではないことをみんなに気付かせたから、支持する人は増えたのだろう。


「んん~っ! 疲れたぁ~!」


 パソコンの電源を切ると、双葉はぐーんと背伸びをする。


「お疲れ様。初配信よく頑張ったな」


 部屋にある冷蔵庫から水を取り出すと、双葉のおでこに当てながら言う。


「ありがと~。アイドルの時よりかは体の疲れはないけど、目とか肩が痛くなるね~これ」


「ずっと画面見たりするものだからな。そうゆう所も何か対策をしないと」


「ブルーライトカットのメガネとか? あれいいとかよく聞くよ?」


「ありだな。買っておこう」


 配信が終わったあとも、何かと次の配信に向けての事を考えてしまう俺達。

 職業は違うけれど、仕事に対する考えは変わってないようだ。


「とりあえず、お疲れのぎゅーが欲しいよ私は~」


 双葉は俺の方に体を向き直すと、両手を広げて構える。


「あれ、事務所でそうゆう事はダメだったんじゃないか?」


 見つかったら色々ヤバそうだし、条件は守らなければ。


「社長が言ってたのは『エッチしちゃダメ』でしょ? ちょっとのイチャイチャくらいへーきだって~」


 早く抱きしめてと言わんばかりに俺の方を見つめながら言う。


「まぁ、ちょっとくらいならな」


 と、双葉の腕の中に入りそのまま腰に手を回す。


「えへへ~、体力が全回復するよ~これ」


「俺、そんなパワー持ってないと思うんだが?」


「私にとっては可児くん自体がパワーの持ち主だよ~、近くにいるだけでやる気が出るし、ぎゅーしたら体力が回復する。エッチなんてしたらフルパワーになるんだからっ!」


 なんとも幸せそうな笑顔をする。

 俺も、双葉がパワーの源だ。


 笑顔を見ているだけでこっちまで笑顔になるし、色々とやる気が出る。

 相思相愛って感じだな本当に。


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