第44話 稼げそうだし?


「「え⁉」」


 全く予想もしていなかった言葉に、俺と双葉は口を揃えて驚く。


「まってどうゆうこと? 意味分かんないんだけど」


「マジで頭のネジ外れてるな……」


「まぁまぁ、そうゆう事だからゆっくり話を聞いてくれない?」


 本当に何を考えているんだこの社長は。

 俺も口からぽろっと本音が出てしまった。


 事務所を新たに作る? それもYoutuber専門の?

 一体何のために……とはいったものの、理由は一つだろうけどな。

 流されるようにまた俺達は椅子へと腰掛ける。


「さってと、何から話そうかな~。何聞きたいとかある?」


 俺達の正面に座り、腕を組む社長。


「なんで事務所なんて作ろうとしてるわけ? 一番謎なんだけど」


 真っ先に食いついたのは双葉だった。


「それね~。みんな今の事務所から部門を作ればいいとか言ってるけどさ~、それじゃダメなんだよ」


「なんで?」


「外からオファーしても蹴られるからに決まってるじゃん」


 淡々とした声で言う。そこに続けて、


「うちにはいい宣伝材料がいないからね。なにせほぼ全員人気ないし」


「この事務所の稼ぎ頭、私だったもんね~」


「その通り! だから今赤字になるかも~って騒いでたんだよ~」


「でしょうね~。今更だけどなんかごめん」


 と、軽く頭を下げる双葉に、


「いいのいいの~! もうその辺に関しては過ぎたことだし気にしないでおくよ~」


「う、うん」


「要するに、フォーリン♡エンジェル、というか双葉くんがいなくなったうちの事務所は無名当然! 流石に言い過ぎだけど本当に事務所の知名度も好感度も……収益だってダダ下がり。だから新しく事務所を立ち上げて私は再起するのだ!」


 おもむろに立ち上がり、ガッツポーズをする社長。

 自分の事務所に所属している人たちを人気ないとか言ってやるなよ。


 個々人頑張ってるんだから、事務所が応援してあげないと伸びるものも伸びないぞ多分。


「また双葉くんがうちに入ってくれるなら稼げそうな事業が展開できそうだし?」


 ニヤニヤとした表情を浮かべる。


「また、私を使って儲けようとしてます?」


 真逆に、嫌悪の目を向ける双葉。


「正直、儲けとかは要らないんだよね~。事務所への取り分1割も要らないからさ、その分名前を貸して欲しいんだよね私としては。あと所属するっていっても、アイドルやってた時みたいに束縛しないから安心してね」


 すごい現実的な内容だな。

 双葉の名前を使えばよくも悪くも注目は浴びる。そしてそのメリットは金銭面的なところと、プライベートがほぼ自由な所。


 これは双葉にとって大きいことだろう。

 事務所が間に入れば、運営などの負担がすべてそちらに周り、こちら側の負担が減る。


 いい事ずくしだ。


 しかも、この社長なら信用が出来そうだ。




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