第43話 新たな事務所



「しっかも、あんな顔されたら許可出すしかないじゃん? ってか最初から私としては全然OKだったし? 興味があったから呼んで話を聞きたかっただけだよ」


 鼻歌混じりに言う。


『社長、こうゆうところあるから』


 と、双葉は俺の袖を引っ張ると横から耳打ちをしてくる。

 やはりどこか欠けてる……というかネジが外れている。


「えっと、一つ質問なんですけどいいですか」


 俺はそっと手を上げる。


「なんだい?」


「なんであんな脅迫文みたいなメールを?」


 呼んで話を聞くだけだったら、あんなに脅すようなメールじゃなくてもよかったはずだ。


「あんくらい言わなきゃ来ないじゃん。この子」


「……ですね」


 大いに納得だ。

 ただ話を聞きたいって言っただけじゃ、双葉は確実に行かなかった。むしろ煽りのメールを送り返しそう。

 この社長、双葉の扱いを熟知している。


「んで? そっちの様が終わったなら帰っていい?」


 不機嫌な双葉は舌打ちをすると、


「おっと~、まだ待ってね~。ちょ~っと大事な話があるから~」


 ちょこんと椅子から立ち上がり、デスクの前へと移動する。

 立って全体像を見ると、小さいな社長。

 本当に身長も小学生と見間違えるくらい。多分、ランドセルとそれなりの幼い格好をさせて通学路を歩かせればそれにしか見えないだろう。


 まぁ、そんな無礼な事口が裂けても言えないが。


「大事な話? どうせまたくだらない話でしょ」


「ちょちょちょ~。かっかしないで話聞いておくれよ~。私達に散々迷惑かけたんだからさぁ~」


「……アイドルやってくれとかの話なら、私は何言っても引き受けないからね」


 俯く双葉。


「アイドルじゃなくてさ、今の双葉くんに引き受けてもらいたい内容なんだな~これが」


「なにそれ」


「いい話でもあり、ちょっと悪い話でもあるんだけど、聞いてくれるかい? 別に強要するわけじゃないよ。興味が少しでもあるなら是非聞いてもらいたい内容かな」


 と、背伸びをしながら双葉の肩に手を置く社長。


「手短に、50文字以内の内容なら聞いてあげる」


 説得された双葉、しぶしぶ顔を上げる。

 今に関係する話とはなんだろうか。


 社長が関わる内容という事は、スケールが大きいことが予想される。

 そこに双葉も参入するとしたら、何か凄い計画を立ててるに違いない。


「んじゃぁ、一つ私から提案なんだけどさ……」


 双葉の言葉を聞いた社長は、デスクから一枚の紙を持ち出し、俺達の前へバッと広げると、


「近々、私はYoutuber専門の事務所を新たに立ち上げようと思う。そこに入ってみる気はあるかい?」


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