第41話 バチバチ
「何歳に見える?」
フンと鼻を鳴らしながら自分が若く見られると自信満々そうにする社長。
「そうですね~。しょうが―――グフっ」
言いかけた時、横から双葉に脇腹を肘で押される。
危ない、危うく口を滑らせて小学生と言いかける所であった。
「ちゅ、20前半くらいですかね」
なんとかそれらしいことを言うと、
「ざんねん~。実は小学生なんだよぉ~」
パァっと両手を広げて満面な笑みを浮かべる。
もしや、この人ヤバいのではないか。という考えが脳裏に浮かんでくる。
なんか、この業界で若くして上に立っている人はどこかしらの頭のネジが外れているイメージ。
双葉にも同じことが言えるし。
「冗談キツいですよ社長」
そんなおちゃらける社長に、マネージャーは呆れて額に手を付く。
「すみません。うちの社長がご迷惑をおかけして。私、双葉さんの元マネージャー藤田美由子(ふじたみゆこ)と申します。そして、こちらの社長は――」
「卜部きらさぎ(とべきさらぎ)だよ~。改めてよろしくね~」
「よ、よろしくお願いします」
社長とは打って変わって、礼儀正しく挨拶をしてくるマネージャー。まともに話せそうな人がいてよかった。
「さて、本題に戻そうか、それで、なんでまたYoutubeなんかに手を出したんだ?」
話の軌道を戻し、社長は真面目な顔で質問する。
「本物のファンのために、もう一度活動しようと思ったからです」
「本物? じゃぁ、会見でボロクソに言ってたファンは本物じゃないと?」
「そうです。あんなキモいガチ恋勢が私の本物のファンなんて片腹痛くなりますね」
「ふーん。なら双葉くんをちゃんと『推し』として見てくれる人が本物と?」
「はい。あとはマナーが良いファンとかですかね」
「ほうほう……じゃ質問を変えよう。なんで相談もせずに事務所をやめた? アイドルをやめるだけだったら事務所に所属しててもできるのを知っているはずだ」
「そんなの自由がないからに決まってるからじゃないですか」
「私は『アイドルは恋愛禁止』とも言ってないし、事務所自体もそんな事は一言も言っていない。暗黙の了解的なものはあるけど、私たちは一切口にしていない」
「はい。だとしても自分のしたいことなどが制限されるのは嫌なのでやめました。だって、私が公式のTwitterで呟いたらすぐ消したじゃないですか。それのどこに自由があると思います?」
ヒートアップしてくる2人の会話。
バチバチだな。
自分の意思を貫いてきた双葉と、事務所を背負っている社長の意見の言い争い。
激しくならないわけがない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます