第36話 アドバイス
「そうえば、柚葉ちゃん呼んでくる?」
ドアの方に振り向くと、双葉は外の様子を伺う。
「うーん、この先話す内容が聞かれてもいいなら」
「全然聞かれてもいい! むしろ聞かれたい!」
「それはなんでだ?」
「ファン目線でアドバイスが欲しいの! そっちの方が確実にちゃんとしたファンが増えるから!」
「確かにそうかも」
柚葉のようなガチファンからのアドバイスは有力な情報だ。聞いて損にはならない、むしろ役に立つ事ばかりだ。
「よっし! 柚葉ちゃん呼んでくるからちょっと待っててねぇ~」
と、席を立ち上がりルンルンで迎えに行く。
その後ろ姿を見て、俺はジュースを一口飲みため息を吐く。
一時はどうなるかと思ったが、いい方向に向いてよかった。
Youtuber。これまた困難が立ちはだかりそうな職種だが、2人。いや強力な助っ人を含め3人でなんとかしよう。
*
「可児さん聞きましたか⁉ 双葉さんYoutuberになるんですって!」
「いやさっきその話をずっとしてたんだって」
大興奮で個室に入って来る柚葉に、呆れた目を向ける俺。
てっきり双葉が断ると思っていたのだろう。
しかし、アイドルとは違うが、Youtuberとして双葉は再復帰する。
ファンからしたら発狂物だろう。
「Youtuber! 最高すぎる! 画面越しに一生双葉さんを見れるってことですよね最高すぎますスパチャ送りまくります!」
「ちょ、一旦落ち着いてお茶でも飲もうね?」
双葉がグラスを渡すと、一気に飲み干し、
「名前とかどうするんですか⁉ あとはチャンネル名とか! あ、もう『だ天使ちゃん』じゃなくて個人名なんですよね⁉ それも考えなくちゃいけない!」
さらに興奮は高まる。
「ゆっくり話をしたいから一旦静かになろうか?」
「――あ、はい」
マジトーンな双葉の声に、柚葉は理性を戻し静かになる。
やっと静かになったか。
このまま騒いでマシンガントークをしてたら、柚葉が主導権を握ることになってたな。
「それで? まずはどっから話を始める?」
改まって、俺は話を本題に戻す。
「まぁ、まずはチャンネル名と、活動名だよね~」
「一番大事です!」
「名前は~……もういっそ『ふたば』でいいと思うんだよね~。いちいち違う名前で呼ばれるのはめんどくさいし」
「あ~ありかもな。分かりやすいし」
「チャンネル名もそれで行こうと思うんだけど、柚葉ちゃん的にはどう?」
「いいと思います! 私もその方が呼びやすいですし、ファンのみんなもシンプルで呼びやすいと思います!」
相変わらず目をキラキラとさせて食い気味に答える。
これ、もしかしたらイエスマンならぬイエスガールになってないか柚葉。
興奮しずぎて全部肯定してきそう。
これじゃぁ相談もクソもなくなるんだが……それだけはやめてほしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます