第31話 輝いてほしい

「柚葉ちゃんはさ~? 他に私とか可児くんに聞きたい事とかない~?」


チーズオムレツを一口食べると、口元を拭きながら聞く。


「聞きたいことですか……?」


「うん! この際言えることは全部答えちゃおーかなと思って!」


「言ったそばからお前は……」


「これからの関係を考慮したうえで私は言ってるから大丈夫だよぉ。それに、可児くんが思ってる以上に私は自己防衛が出来るので!」


胸を張りながら自慢げな表情をする。

そこに関しては双葉を信用している。

自己防衛が出来ていなかったら、アイドルをしている時に熱愛報道されていただろうし。


「聞きたいこととかぁ~、あとは私に出来る範囲での要望とか?」


「さっき私が聞きたかったことは全部聞いてしまったので……ちょっと考えさせてほしいです」


「うんうん~。じーっくり考えていいからねぇ」


机に両肘をつき、にこやかに柚葉を見る。

要望ね……なんかヤバいことを言われそうだ。


理性を保ってるなら、心配する必要はないが、出会った時みたいに自分を抑えられなくて想像もできないような事を言い出したら止まらなくなりそう。


「そんなに難しく考えなくても、些細なこととかでも大丈夫だからね~」


「いや、一個思いついているんですけど、流石に言えなくて」


「んん~? どんな感じのやつなのかなぁ?」


「双葉さんの気持ちを考えると言えません……」


「もしかして、エッチなこととか?」


「なっ……!」


「あれぇ~? 図星?」


「ちちち違いますから! 私は双葉さんに恋愛感情とかそうゆうものは一切ないですから!」


プププと小バカにするような笑みを浮かべる双葉に、ボっと顔を赤くしながらも否定する柚葉。


「恋愛感情はないんだ、安心」


最初からさほど疑ってはいなかったが、本人の口から聞くと安心する。

初手は奇行に走った双葉であったが、ちゃんと双葉を『推し』と見る心は忘れない、いいファンだ。

じゃなきゃ、『だ天使ちゃん』から認知もされてないだろうし。


「多分、双葉さんに私が思っていることを言ったら嫌われちゃいます」


突然、声のトーンが低くなり俯く。


「大丈夫だよ。もしも私が嫌だったとしても、一回くらいは見逃してあげる」


「でもっ!」


「私、現在進行形でネット上だけどボロクソ言われてるの。たった一人になに言われたって痛くもかゆくもないからさ」


一口ジュースを飲むと、コップの縁を親指で擦る。そこに続けて、


「だから、柚葉ちゃんの本音。私は聞いてみたいな」


双葉の優しい言葉に、


「分かりました」


と、柚葉はゆっくりと頷く。そして深く息を吸い、一呼吸置くと、


「私、双葉さんにまた輝いて欲しいです」


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