第28話 もしや、ヤバい子?


「――――そこから仲良くなって付き合ったみたいな感じだが……どうした」


 大体の馴れ初めを言い終わり、少し俯いていた俺は柚葉の方を見ると、ポツリと静かに涙を流している。


「え、ちょ柚葉ちゃんどうした?」


「俺なんも泣かせるような話してないよ……な?」


 急に泣き出す柚葉を、心配そうに撫でる双葉と、眉をひそめて見つめる俺。


「可児くん女の子泣かしちゃダメでしょーがぁ」


「なんもしてないだろ俺」


「話の内容が泣いちゃった理由なんじゃないの?」


「頼まれたから話しただけなんだが?」


「こう、なんというか~、言葉選び?」


「あんま泣いてる理由分かってないだろお前」


「あうっ」


 目を泳がせながら言う双葉のこめかみをぐりぐりと軽く押す。

 なんで泣いてるんだマジで。

 全く見当がつかない。だって泣かせる話なんてなくないか? だた俺と双葉の馴れ初めを離しただけなんだが……


 困惑する俺であったが、


「双葉さんと隣の席で仲良くなって付き合える世界線……羨ましすぎる‼ 悔しい‼」


 声を張り、唇を噛み締める柚葉。

 やっぱ話の内容が原因だったようだ。


 ていうか悲しくて泣いてるんじゃなくて悔し涙かよ。


 たしかにファンからしたらその世界線は目から血が噴き出る程に嬉しいだろうが、それをここで公言する必要はないだろう。

 もしや、思ってたよりヤバい子なのか? 良い子だけど。


「ま、まぁ私たちはこんな感じの出会いだけど私と柚葉ちゃんも運命的だと思わない?」


 すかざず双葉はフォローに入る。


「ほら、私と柚葉ちゃんだって同じ学校だし、今こうやってお話してるわけじゃん? もうそれはお友達でしょ?」


「そ、そうですか……?」


「うん! 私と柚葉ちゃんは友達だよぉ~」


「すごく嬉しいですけど……恋人になれる世界線に入りたかった……です」


「それは物理的に無理だと思うけど……」


 百合、という選択肢はあるが、あいにく双葉は俺と付き合っている。

 百合展開には意地でもさせない。


「でも……可児さんが敵じゃないことは分かりました」


 涙をぬぐうと、グスリと鼻声で柚葉は言う。


「最初から言ってるでしょ? まぁいいけど」


「冷静に考えるとヤバいやつが双葉さんに近づけるわけないんですよ。恋人はおろか話す事さえできないんですよ」


「よくお分かりで」


「多少の嫉妬と僻みと双葉さんと付き合ってるという嫌悪感はありますが、仲良くはできそうです。好きなものが共通なので」


「そ、そりゃーどうも……」


 と、俺は苦笑いを浮かべる。

 仲良くはなれそうだな……多分。

 ズバズバいうタイプだからなにも心配いらないというか、話しやすそう。


 しかし、双葉を百合に持っていかないように注意はしておかないと。

 NTRの被害にあるのはごめんだ。

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