第24話 あの超優良ファン


 一体どうゆう状況なんだ。

 想像もしていなかった状況に、棒立ちになる俺。

 まず、双葉に抱きついている少女は一体誰なんだ? この学校の生徒ということには違いない。


 学年は……ネクタイの色が青ということは一個下の1年だな。

 ちなみに2年は赤色、3年は緑色だ。


 双葉の事を『だ天使ちゃん』と言っていることは、『フォーリン♡エンジェル』のファンという事も確定だ。

 ただ一個下のファンに絡まれているだけなのだろうか。


「無言で立ってないで助けてくれるかな?」


「あ、ごめん展開が読めなくて」


 突っ立っている俺に、プクリと頬を膨らませながら助けを求める双葉。


「一旦、現時点で分かってる事を説明してくれないか?」


「その前にこの子を私から剥がしてくれない?」


「んなこと言われてもな……」


 抱きつく少女は、双葉の胸元に顔をうずくめ、一向に離れようとしない。


「とりあえず説明を先にいいか?」


「この子が私の大ファン……それも私が前に謝っておきたいって言ってたアカウントの子……」


「……マジ?」


「マジよ」


 超優良ファンの子ってことか。双葉ですら名前を覚えているくらいの模範的なファン。

 まさか同じ学校だったとは……どんな奇跡だよにしても。


「とりあえず~、私から離れてくれないかな? 柚葉ちゃん」


「嫌です! どうせ逃げるじゃないですか!」


「いや逃げないからさぁ?」


「ていうかこの男はなんなんですか⁉ だ天使ちゃんとどうゆう関係なんですか⁉」


「私はもうだ天使ちゃんじゃなくて一般人の双葉だから。あとこの人は味方だから安心して?」


「こんないかにも女子のか弱さに漬け込んで誑かしてそうな人が仲間なんですか⁉」


 鋭い眼差しで見てくる、名前は柚葉と思われる少女。

 俺をどんな目で見てるんだこの少女は。誑かしてるって、どんな想像してるんだよ。


「俺は双葉と同じクラスの可児姫綺。そっちの名前は?」


 警戒心を解こうと軽く自己紹介をすると、


「涼風柚葉(すずかぜゆずは)! 一年! それでだ天使ちゃんとはどうゆう関係なんですか⁉」


 快くではないか、ちゃんと名前を教えてくれた。


「どんな関係って……クラスメイトだよ?」


「ただのクラスメイトをこんな状況にだ天使ちゃんたるものが呼び出すわけないじゃないですか! 私、そのくらい分かりますからね!」


 グルルと唸りながらこちらを睨んでくる柚葉。

 これは正直に言った方がいいのだろうか。双葉の彼氏だって。

 でもそうしたら取り乱して大変なことになりそうだ。まぁその場合は双葉に上手くなだめてもらえばいいだけの話なのだろうか。


 しかしそこまで心配はいらないだろう。

 超が付くほどの優良ファンなんだ。『だ天使ちゃん』の恋人が俺だと言ったとして、バラすようなことはしないと思う。

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