第22話 休学明け


 誹謗中傷を訴える旨のツイートは脅威の30万いいね、23万リツイート、7万リプを記録した。


 連日ニュースにも取り上げられ、10日経った今、警察も動き出したそうだ。

 件の奴らが検挙されるのも時間の問題。

 そして今日は双葉の休学明け登校日。


「俺、ショックすぎてあの会見の日からまともに寝れてないんだけど……」


 俺の前にいるのは、死にそうな目で机にもたれかかる宇留間。

 あの会見以来衝撃が強すぎて不眠症になったらしい。クラスのみんなも、男女共に双葉への印象が180度変わり、話を聞きたい気持ちうずうずとしている。


 あの会見については学校で賛否両論で分かれている。『流石に言い過ぎ』とか『ファンをなんだと思ってるの』とかの否定意見と、『ギャップ萌え』だとか『こうゆうキッパリ言う所が前の露崎さんよりいい』などの賛成意見。

 批判の嵐だと思っていたが、賛成も多いのが意外だ。


「露崎さん……ファンだけじゃなくて俺達のこともそう思ってたのかな」


 情けない声で宇留間は言う。


「めんどくさいとかそうゆう感じに?」


「うん……」


「それはなんじゃないか? 双――露崎さんはあくまでファンに対してであって他は何も変わらないと思うぞ」


「そうだといいんだけどな……」


 学校の事については普段特にこれといって話してはいない。ちょっと人間関係がめんどくさいとだけ漏らしていることはあるが、一部の女子や双葉の囲いにいる男子だけらしい。


「おはよぉ~。みんな久しぶり~」


 突然開く教室のドアから、聞き覚えのある声が響く。

 ざわついていた教室中が一気に静まり返り、視線がそろってドアの方を向く。

 みなの視線の先には、あくびをして教室に入って来る双葉の姿。


 刹那、クラスの8割ほどの人が一斉に席を立ち上がると興奮気味に双葉の方へ駆け寄る。


「双葉ちゃん会見どうゆうこと⁉」「引退とかガチなんでしょ⁉」「彼氏いるって聞いてなかったんですけど‼」なとど案の定、質問攻めされる。


 チラリとこちらを見てくる双葉だが、人に飲み込まれてその顔はすぐに見えなくなった。


「あぁ~、そうゆう話はあんまり言わない方向で行こうと思うからさぁ~」


 ざわめきの中から微かに聞こえる声。

 そして人をかき分けながら自分の席へと足を運ぶ。


「なんでなんで⁉ やっぱ事務所命令とか?」「ちょっとでいいから彼氏のこととか聞きたい!」「アンチした人訴えるってマジなの?」


 話さないと宣言した矢先に、またもや質問をしてくるクラスメイト。


「ありゃ~今日の学校修羅場になりそうだ」


 俺は、それを遠目で見る。

 双葉の席は人で埋め尽くされえていて本人の姿は見えない。

「露崎さんやっと学校来たんだね……話せる機会あるかな」


 かすれた声をしながら宇留間は双葉の席の方を見る。


「いつかは話せるんじゃないか? 一週間とか」


「一ヵ月くらいは机の周りに人が集まりそうだけど……?」


「露崎さんの周りに人がいるのはいつものことじゃん。一週間もすればあんなに集まることなないだろう」


「どうだろうな……みんな衝撃受けてたしどうなんだろ」


「お前ほどではないけどな」


 不眠症になるまで落ち込めるのが凄い。あんまり関わりがないクラスメイトの報道でだぞ?


 そこらのファンより被害を受けているなこれは。

 クラスメイトもよくデリカシーもなく質問攻めをするよな。遠慮とか空気を読むとかそういう人の心は持っていないのだろうか。


 まぁ、何を言っても行動は制限できないだろうから、時間が経つのを待って興味がなくなるのを待つのが一番だな。

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