第20話 満足だけど、さらに


「落ち着くまでは静かに過ごすとしますか。ここで何かしても自分の株が下がるだけだし」


 フーっとソファーに寄りかかりながら言う双葉。


「そうした方がいいと思うぞ?」


「でもさぁ~、ネット民に好き勝手言わせてるの今考えたらなんかムカつくんだよね~」


 スマホの画面をジーっと眺める。


「自分から言わせてたのに?」


「私はこれを見てる分には面白いよ? でもあいつらは叩いてそれで満足しちゃうからもっと地獄を味合わせたいな~って」


「鬼か」


「当り前じゃん」


 サムズアップする。

 確かに、散々自分勝手しておいてるやつを放って置いて、また他の話題にくっついて同じことを繰り返すより、今のうちに痛い目に合わせておいたほうがよさそうだ。


「今から警察とかに掛け合って、私の事を誹謗中傷したアカウントを全部特定して賠償金でも払わせようかな」


「全然ありだと思うけど、お金結構かかるんじゃないか?」


「そこは心配しないで。私これまでに死ぬほど稼いでるから」


「そうだったわ」


 以前、双葉の一ヶ月分の給料明細を見たことがあるのだが、開いた口がふさがらなかったことを思い出した。

 サラリーマンの平均年収ほどの収入があったからな。 高校生でだぞ?


「だからさ~、まだ『だ天使ちゃん』としての公式Twitterが残ってる間に、宣言しておこうかな~って」


「今やっちゃまずいんじゃないのかでも」


「大丈夫じゃない?」


「ほら、誰が言ったとか後々特定するより、ある程度探してからの方が効率がいいのかなーって。消されてたら特定とめんどくさそう」


「大丈夫だよ~そこは」


 と、スマホの画面を俺に見せてくる。


「既に『死ね』とか『消えろ』とかその他暴言を書いてあるツイートを検索して写真撮ってくれるパソコンのソフトを見つけたからそれで全部証拠はある」


「抜かりない……」


 表示されるのは、クラウドに保存されているTwitter画面のスクショがこれでもかとある。


 スクロールしても終わりが見えないくらいに。

 なんという行動力。やはり口にしていなかっただけで元々裁判でも起こそうとしていたのか。


「まぁ、単純に私が思い出として取っておきたかっただけでやってたんだけど、役に立つ時が来ましたな」


 クククと腹黒い笑みを浮かべる双葉。


「ちなみに何枚くらいあるんだ?」


「ざっと4000枚近く? アカウント数にしたら7000人くらいかな~。見逃してるものあると思うから全部が全部じゃないけどね」


「あとは警察に特定を任せると」


「うん。自分でやるのには手間がかかりすぎるし、もう思い出としてはいっぱい保存できたから満足かな~」


 満面の笑みでスマホを眺める。そこに続けて、


「あとは、私を叩いても普通に生活してる奴らが、賠償金とか場合によって刑務所に入って人生台無しになった姿を見たらもう完璧!」


 多分、ネット民は今頃言いたいことを全部書き込んで満足しているだろうな。


 ガチ恋勢などは一生貼り付いて離れないだろうが、自分の暴論を吐き出しておけばいずれ満足する。


 満足しているところに申し訳ないが、今からさらなる地獄を見ることを覚悟した方がいい。


 なんたって、双葉はやるとなったらとことん殺るからな。


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