第7話 夢物語

「露崎さん……彼氏いたんだな」


 唐突に遠い目をしながら呟く宇留間。


「居てもおかしくはないよな。普通に考えて」


「まぁな。外ではアイドル、学校ではクラスメイトとして愛想もいい。そしてなにより可愛い……彼氏の一人や二人居てもおかしくないよな~」


「彼氏は一人しかいないだろ」


「どうせ、イケメン俳優とかと裏で付き合ってたって言うのがオチなんだろうけど」


「……かもな」


 当然、件の双葉の彼氏が俺なんて口が裂けても言えるわけなく、苦笑いをする。


「何、お前露崎さんのこと狙ってたん?」


 頬杖を付きながら聞くと、


「当り前だろ! 逆にワンチャンを狙わない人がどこにいるんだ⁉」


「えなにお前泣いてる?」


 机をバンと叩きながら、涙を流す宇留間。


「だって、あんな超美少女人気アイドルがクラスメイトとか、狙わないわけなくない⁉ 何かの間違えで付き合えたらとかハプニングがあるかとか一度は考えるでしょ誰しも!」


「ハプニングってなんだよ」


「もちろんエッチなハプニングだろ!」


「んな夢物語あるか」


「想像するだけならタダだ! 同じ学校同じクラスだけでも夢の中みたいなもんなんだから!」


 だとしたら、その夢物語の人物と付き合っている俺は何者なのか。

 多分、こいつにとって、いや、全国民にとって羨ましい存在だろう。

 自分で言うのはなんだが、崇められてもいい人間だと思う。


 だって、美少女アイドルと付き合ってるわけだし、普通に勝ち組。

 こいつらが俺と双葉が付き合ってる事を知ったら目から血が噴き出るな。


「ていうか、そうゆうお前は興味ないのかよ」


 と、ジト目で俺を見てくる。


「興味か~……ない事はないことはないかもな」


「なんだよそれ、正直に吐けよ」


「可愛いとは思うよな。でも付き合うとかは現実味がなくて考えられない」


「うわ、その気持ちは分かるわ」


 こうでも言わないと、詮索されるかもしれないな。

 気は無いけど、可愛いとだけ言っておいた方が不自然ではない。

 これでもし「全く興味ない」だのと言ったら逆に怪しまれるからな。


「どうせ、露崎さんと付き合ってるのは俳優とかだろうし、俺達には無縁な話だよ」


 背もたれにもたれかかりながら言う俺。

 そして、自分にヘイトが向かないように、現実味のある話を振る。


 相変わらずいい立ち回り方だ。




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