第6話 翌日の学校


「はぁ……学校イヤだ」


 翌日、目が覚めた俺はため息交じりに呟く。

 電撃引退を発表してからの登校。学校の人は全員双葉がアイドルをしていることを知っているわけだし、あいつの元に人が殺到するのが目に見えている。


 まぁ、俺と双葉が付き合ってることはまだ誰も知らないし、直接的に俺に被害は来ないのだが……双葉が心配だ。

 登校した瞬間、人に囲まれ質問攻めをされて抜け出せなくなる未来が見える。

 授業を始められない事態まで発生しそうだ。


 心配しているものの、あくまで俺の予想だが、あいつは呑気に登校してきそうな気がする。

 元気に教室に入って、みんなからの質問の嵐に「彼氏いるから引退しただけだよ~」と一言だけ答えて終わる。


 案外そっちの方が平和なのかもしれないな。

 今日は早めに登校してクラスで双葉を待ち構えなくては……



                 *



「おはよーす」


「今日早くないか?」


「お前も人の事言えないだろ」


 いつもより30分ほど家を早く出て学校へ向かい、教室に入ると先客が居た。

 宇留間勝人(うるまかつと)。

 高校から仲の良い同級生だ。

 席も斜めと近く、割と俺に絡んでくる人物。


「なんで今日はそんな早いんだ?」


 荷物を机に置き、椅子を引きながら言う俺。


「なんでって、そんなの一つしかないだろ」


「露崎のことか?」


「そう! ってお前もなのかよ」


「当り前だろ。あんな報道見たら学校に早く行きたくなる」


 こいつもだったか。

 考えることは同じのようだ。

 男子は大半の人が双葉に恋をしているから、あんな報道を耳にした次の日は早く学校へ行って露崎さん(双葉)と話したい、とでも思っているのだろう。


 こんな早くから学校に来ている勝人も例外ではない。

 それか、絶望して学校に来ない奴もいそう。


「今日、俺達のクラスほぼ全員早めに登校してくるらしいぜ」


「それは露崎さんの事でか?」


「そうそうー。早く本人に色々聞きたいんだってさ」


「ほぉ~。みんなよくやるわな」


「お前もだけどな」


 表では不自然に思われないようにみんなと同じ理由にしているが、実際真逆だからな。

 事情も知ってるし、今日は観察しに来ただけだからな。

 あとはソワソワして落ち着かなかったから。


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