第14話
『…ふふ…ふふふ…
まだ大切なものがあると言うのか…』
笑みを浮かべ、
ゆっくりとメガネを外した。
そう。
誠は消えていない・・・
まだ女性が裸に見えたのだ。
『俺は自分が大切じゃないのか?
・・・・・・・・・・・・・・・
ふふ・・・まったくお笑いだよ・・・
笑うしかねぇだろう』
母が消えた以上は自分が最後でメガネは服を着た女性を映すはず。
確信の中で覚悟を決めた。
しかしメガネは最後を迎えず誠もまだ存在している。
『・・・でも・・・いったい何が消えたんだ。
ま、もう・・・どうでもいい。
どうでもいいよ・・・』
もうそこの問題に取りかかる意識も
力もなくなっていた。
わかっている事は。
『俺が消えず女性の裸が見えた以上まだ続くと言う事だ。しかしもうこれ以上は見たくもないし知りたくもない。
こんなメガネは存在してはいけないんだ・・・
やはり見えてはいけないものは
見えてはいけないんだよ。
それが見えてしまうものなんてあっちゃいけないんだ。
俺は女性の裸も、人の心も見てしまった。
そして自分の心も。
そういう俺もあっちゃいけないんだ・・・』
見えてはいけないものは見えてはいけない。
だからこの世の中を生きてゆくことができるのかもしれない。
その見えてはいけないものを誠は幾つも見てしまった。
そんなメガネはこの世に存在してはならない。そしてそういう自分もまた世の中に存在してはいけないのだと。。。
あれほど宝物のように大切にしていたメガネを今度は誠自身が消そうとしていた。
自らの手で、現実的に消さなければ。
このメガネもまた、誠には大切なものではなかったと言うことだ。
『俺にはもう大切なものはないんだ。
俺の周りにいる人や残ってる物はもう俺には
必要ないんだ。
そして。
俺自身もまた
大切ではないから消えなかったんだ。
さて、これからどう生きてゆこうか・・・
・・・それとも・・・』
生きるべきか死ぬべきか・・・。
誠は踏み入ってはならぬ分かれ道に立っていた。
最後だと思っていた場面でいったい何が消えたのか。
それはもしかしたら誠が意識すらない全く大切だと思っていなかったものなのか。
はたまた今の誠の現状、すなわち誠の未来が消えたのか?
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