最終話

どこか冷静になっていた誠だったが

急に怒りがこみ上げ、ほこ先をメガネに向けた。


『・・・くっそ~・・・

 っくぅっそ~~!!』


誠はメガネを手でギュッと強く握り締め地面におもいっきり叩きつけ足で何度も踏み潰した。


『っくっそ~!!

 っくぅっそ~~!!

あ~~っ!1』


行き場を失った誠の感情でグチャグチャに壊れたメガネはレンズが割れ、折れ曲がり、

原型を失っていた。

そして少し震えているかのようにミシミシと静かに音をたてていた。

その姿は死に際の人間が何か最後の力を振り絞るかのように見えた。


そして次の瞬間!

踏み潰したメガネから真っ白な閃光が飛び出した!


『わっ!』


その閃光は一度上空へ上がったかと思うと誠めがけて急降下し、誠の体を一気に突き抜けた! それはまさしく一瞬の出来事だった。


誠は後ろに仰け反りながら、閃光が突き抜けたお腹の辺りを両手で押さえ叫んだ。


『うわっ・・・! なんだ今のは!? 』


そして誠の体を突き抜けた真っ白な閃光は

壊れたメガネを抱きかかえるように巻き込み、渦を巻くように天高く昇り、やがて見えなくなった。


『メガネから光が飛び出し、俺の体を突き抜けていったぞ!


あの閃光はいったい・・・


 それにこの感覚は・・・


何かがおかしいぞ』



誠は何かが消えた感覚と同時に何かを得たような感覚も感じていた。

メガネを手にしてから何度も感じてきたあの感覚ではなく、それは血が入れ替わったというべきか、心が入れ替わったと言うべきか・・・。



『わからないが。。。

メガネが壊れた事で何かが起こったのか?


何かはわからないが。。。

なんだか・・・

うん。俺自身が明らかに違う。

俺の何かが消えたのか⁉︎』


誠は拳を握り締め、それを一発胸にガツンとあてた。

そしてゆっくりと拳を解除し手のひらでさすりはじめた。


メガネは壊れ効力を失い誠にとって今最も大切な何かが誠の中で消えたのか?

それとも何かが起こったのか?



『それにしてもメガネはどこに行ったんだろう・・・』



『メガネが俺を選び、はたまた俺がメガネを選んだのか・・・

メガネを拾い、いろんなものが見え、

いろんなものがわかり、


そして・・・いろんなものを失った・・・。

そう。俺の大切なもの達』



誠はメガネが消えていった空を見つめ消えていったもの達への気持ち、過去と現在、そして少しぼやけた未来を重ね合わせていた。

今の誠には最後に消えたものはわかっていないが、今まで消えていったもの達の心が誠の中で何かを消し、何かが生まれたのかもしれない。



全てが始まった公園で。

全てを終わらせるはずだった男に。

新たな風が吹いた。



『メガネも消えて無くなったし、

俺と同じような事はもうないだろう。


・・・さっ!

明日からに備えてまずは求人誌を買って帰るか!!

あっ! コイツもやめるかな』


くわえたタバコを口からはずし、

訪れるであろう新しい明日へと

誠は歩きだした。



それは。

「なんとなく」ではなく。





『うん!? メガネが落ちてるぞ。。。』

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