第11話

『先輩が大切だったと言うことは消えたことからしてそうだったんだろう。

でも大切なものに順番があり、それに従って消えていくとするならきっとユキちゃんや友達もこの先消えていくはずだ』


誠はメガネをつかみ、

メガネに向けて話しかけた。


『お前は俺に何をしようとしてるんだ?

まだお金もあるしタバコもある。

それにお気に入りの上着だって。

これから消えると言うのか?


もしこのままなら、

ユキちゃんや友達よりも、

俺にはペンやノート、

テレビやパソコンのほうが大切だと言うのか?

どうなんだ?

・・・・・・・・・・


こうなったら・・・

最後の一番大切なものまで確かめてやる!』


      

今一番大切なもの。

それは自分。

最後には自分が消えるはず。


それが答えならここで終わらす事もできる。

何も自分が消えなくてもいいしこれ以上何も、誰も消さなくてもいい。

しかしユキや友達、両親さえまだ消えていない。そして先輩の志村が消えた事。

その訳と自分が信じてるものを今の誠には確かめずにはいられなかった。


自分が大切と思っているものが間違いではない確信がほしい。


自分が望むような結果になるかはわからない。望むような結果なんてないのかもしれない。終わるかどうかもまたわからない。

しかしここで、このままで、

終わることは出来ないのだ。


そして誠は外に出て

歩く女性に向かいスイッチを押した。



『まだ…残っている』



目の前の女性は裸だった。


そう確認すると全力で階段を上り部屋に入り鍵を締めすぐに携帯を開けた。

周りを探さずすぐに携帯を開けたのはもう消えるのは物ではなく人だと、それに志村が消えた以上は次はユキや友達だろうと。

そう信じて携帯を見つめる誠に更なる衝撃が走った。



『えっ⁉︎

・・・何故だ?』



口から出る言葉はもう限られていた。

携帯にはユキや友達のデータはまだ残っていたのだ。

誰が消えているという恐怖ではなく、消えていないという現象に失望感を感じる誠だった。



『なぜ・・・なぜ・・・

 消えるのはここではないのか?

大切ではないのか?・・・』



誠はその現実を、果たして現実なのかは謎だが少し自分を巻き戻しだした。

いったい何が、誰が消えたんだと携帯のアドレスを探りはじめた。


そして誠はすぐに更なる絶望と言う波に飲み込まれることになる。



『はっ!・・・ 

うわ~~!!』



誠が見たもの・・・

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