第9話

『自分の大切なものはわかっているつもりだ。 しかし今まで消えたものはそうでないものもあるぞ?

ペンとか雑誌、ゲームなんてどうでもいいぞ・・・。

なぜそんなものが消えるんだろう?

俺はおちょくられているのか?

いったい幾つあるんだ?

なんとなくだがどうも消えていくものには順番があるようだ。

と、すればそろそろダメージをくらうようなものが消えていくはずだ。

お金か? タバコか?』


これは裸を見たいと言う欲望を超えつつあった。女性の裸が見える嬉しさはまだあるのだが、それよりも大切なものが消えると言うシステムに心は走っていった。


そしてここからはスイッチをむやみに押さず、

一回押しては消えたものを確かめていった。

すでに誠の周りには物と言うものがあまりないのだが、なぜかこの辺りから物というものが消えていない。

しかもそろそろ消えるだろうと踏んでいたお金やタバコもまだある。

それにお気に入りの上着だって。

物ではなく消えていってるものはなんなのか。


『最近なんだか疲れやすい・・・

それに眠いのに眠れない。

しかも裸を見すぎたのか、

性欲もなんだか・・・』


思い込みかもしれないが。

誠はそんな体の内面的な部分が消えていってる気がしていた。

それが本当ならと少し恐怖を感じ出してはいたが納得はしていなかった。


(何かもっと凄いものが消えるはずだ。

それはデカさとかじゃなくて・・・。)


そんな思いの中で、

「見える」「消える」といった現象を繰り返し、誠は夏という季節を一気に駆け抜けていった。


そして少し涼しさが漂いはじめたある日。


いつもの喫茶店。

そう。

あの口うるさい先輩、志村と落ち合う場所だ。 しかし今回はユキに誘われ訪れたのだ。

もちろんメガネはかけている。

誠にとってどんなキレイな女性よりもユキの裸だけは別ものだった。


『久しぶりだね。元気にしてたの?』


『うん。。。まぁね。』


そんな何気ない会話から、この後真っ青になる会話が始まる。

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