第8話
『待、て、よ・・・』
『そ~だ、 思い出した~!
消えるんだ!』
『スイッチを押すたびに大切なものが消えるんだった! そしてスイッチを押しても何も起こらない時、最後には一番大切なものが!
そうか~だからいろんなものが無くなるんだ~。そっかそっか。これでスッキリしたよ~
ま、ようするに消えるということだ!』
誠はものが消えた事があまり重大な事とは思わなかったのだ。
今のところ大切と言えば大切、そうじゃないと言えばそうと言うものばかり。
それに「大切なものが消える」といった現象の内訳よりも原因を発見した事に意識が働いたようだ。
『ま、こんなもの程度なら別にたいしたことではないさ。
お宝箱も、本だって読めなくても問題ないしペンだって別に。
でもこのメガネは幾ら積まれても渡せないし、幾ら出しても手に入らないんだからな』
消えていったものが誠にとってどう大切なものかはわからない。
自分が思っている事と逆の事というのはよくあることだ。
しかし、契約には確かに「あなたにとって今大切なものが消える」と書いてあるのだ。
だから今の誠には大切なものにかわりはないのだろう。
季節は夏真っ盛り。
セミの合唱も街中に響き渡り、太陽の熱も、温度も、そして誠の心も体も連日夏日だった。
そんな誠はとりつかれたように街中をうろつき女性を見つめ続けた。
この魅力と言うか魔力と言うか・・・
そうそう抜け出すことはできないであろう。
それはドラッグから抜け出せない中毒者のように、誠もまたメガネ中毒になっていた。
しかしそれと引き換えに部屋にある物はもうほとんどが消えていた。
それは今までとは違い、テレビやオーディオ、ゲーム、冷蔵庫にパソコンといったものでだんだん生活に無くては困るものにまでに達してきていた。
『おいおい・・・消えるのはいいが、これじゃ生活できねぇよ。
なんか他のにしてくれよ~
買っても消えるのわかってるからさぁ~』
裸を見るのと同じく消えるという現象も誠にとってすでに当たり前のようになっていた。
まるで引っ越したかのように綺麗さっぱりになっている部屋。
ここらで誠も、いい加減「消える」といった現象に関心を持ち始めた。
女性の裸を見るのと引き換えにといってもこうも消えるとは・・・と。
しかしその関心も一度持ってしまうと何か答えみたいなものを求めだしてくるものだ。
そして時間が経つにつれ、そんな誠の心に少し異変が起き出してきたのである。
今までは男の本能丸出しで女性の裸をとスイッチを押していたのだが、
【次は何が消えるのか?】
と言う方向に心が動き出してきたのだ。
そしてそれは津波のように段々と大きくなりだし誠に向かってきた。
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