第7話

それから誠はメガネを片時も離さず、理想の女性を見つけてはメガネをかけスイッチを押した。 もちろんユキの裸もあれから何回も見ている。

大好きなユキの裸が見られるなんて誠の性格からするとこのメガネ無しではまず考えられないことだ。

初めての時は驚きでそれどころではなかったが、今はゆっくりじっくりと見ていられる。

そんな犯罪の臭いがプンプンする事を誠は平気でやっていた。

しかし誠自身に犯罪という臭いはどこからも漂ってはいなかっただろう。

悪いことをしているという感覚は今の誠にはなかった。

裸が見えるということも、もう当たり前のようになっていたのだ。


そんな天国のような日々の裏側で周りの物がどんどん消えていった。

でもそれは現段階では誠が生活していく上で

そんなに重要なものではなかった。

ペンやノート、買ったばかりの雑誌など、無ければ無いで、それはそれでと落ち着ける範囲のものだった。

おかげでゴミ置き場のような部屋も少しキレイになってきている。

無くなる事を友達に相談したい気持ちはあるが、今は誰にも触れたくなかった。

とにかく自分に誰も近づかせたくなかった。


しかしさすがの誠も怖くなり絶対泥棒の仕業だと警察に行くが何も手掛かりがなく解決には至らなかった。

そして消えてゆくものを不思議に感じながらも欲望のままに毎日スイッチを押し続けるのだった。


ところで、そんないろいろなものが消えた生活と言えば・・・


『ピンポーン♪ 

柏木さ~ん 宅急便で~す』


『は~い、はい』


『ではこちらにサインを!』


『はいはい・・・えっと、・・・ペン・・・ペン』

(あっ! そうだ・・・無くなったんだ・・・)


『すいません・・・ペン貸してください』


『あっ、はい、どうぞ』


ペンを借り、記入しようとするが・・・


『あれ? これ書けないですね。インクが無いのかな?』


『いや、そんなばすはないと思うんですが~

 ちょっといいですか?』

・・・・・・・

『書けますけど・・・』


と、いった具合だ。


『ペンとは言え、無ければ不便なもんだな。

 でもなぜ俺が書くと書けないんだ!?』


日頃あまり使わないものだから無ければ無いで落ち着ける範囲だったはずのものだが、

いざ必要とする時に無いと不便を感じるものだ。


『ま、とにかくペンを買っておかなければな』


そしてペンを購入すれば。


『なんで無くなるんだよ! 

昨日買ったばかりだぜ~。

 絶対おかしいよ! 無くすはずがない!』


消えたものを新たに購入しても、

それは買っても買ってもすぐに消えてしまう。

一度消えたものはスイッチを押す押さないに関係なくどうやらまた消えてしまうらしい。

それに「消える」という契約にまだ気づいてない誠は「消えた」という発想ではなく、

「無くなった」という発想しかできないのだ。


そしてそんなある日。

ついに誠は思い出すのだった。

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