第6話
家路に着いた誠はこの感動を誰かに伝えようかとも思ったがそれはすぐに撤回した。
こんな素晴らしい物を誰かに言ったものなら。。。 と。
『さってっと!
これはもう奇跡だぞ。奇跡が俺に!
神様がくれたこのメガネはここにきちんと保管しとくかな!』
誠は自分の大切なものを子供の頃からある箱に入れていたのだ。
それはみかん箱ぐらいのもので子供の頃に書いたのであろう外側に「たからもの」と平仮名で書いてあった。
中身はおもちゃや時計、雑誌の切り抜きやアニメのフィギュアなど。
その箱を押入れから取り出し机の上に置き、
最高の笑みを浮かべながら蓋を開いた。
『あれ! えっ? ない!
ない・・・ えっ~!』
びっくりしたのも無理もない。
それら大切なものが箱から幾つか
消えていたのだ。
『なぜだ? 泥棒が入ったのか!
でも部屋は荒らされてないし・・・
通帳だって・・・
あるな。 なぜ無くなっているんだ?』
そう。
裸が見えた!
そこしか捉えていない誠はすっかり忘れていた。 と、言うより気づかないでいた。
メガネのスイッチを一回押すたびに
大切なものがひとつずつ消えてしまう契約を。。。
夢中で何回か押した為に幾つかの大切なものがすでに消えていたのだ。
『あれ~・・・どこかにしまったのかな~
しかし箱を別のものに変えた覚えはないし・・・』
誠は部屋中を探るが見つかるはずがなかった。 消えてしまったのだから。
このメガネの言う『消えてしまう』とは、はじめからそこに存在しなかったことになるのだ。 メガネの持ち主である誠だけが消えてしまった事実をわかるのだ。
だから箱の中身を知っている人に確認しようにも何も返ってこないのだ。
『いったいどこにしまったんだろう・・・
それに箱はあるのになぜ中身だけ。
ま、いっか。
それよりもっとすごい物を手に入れたんだからな。今の俺にはこのメガネが宝物さ』
そう自分をなだめ、消えてしまった大切なものも消えた理由さえも、
メガネの効力にはかなわなかった。
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