第3話

次の朝・・・


昨日のコンビニ弁当の食べ残しを腹に入れ

上着を羽織り、タバコをくわえ外に出かけた。

誠はかなりのヘビースモーカーでタバコも辞めたほうがいいのはわかっていた。

しかし誠に絡みつくいろいろなものと同じく、なかなか決断までには至らずなんとなく吸い続けていた。


誠が出かけて行ったのは口うるさい先輩の志村に会う為だ。

この志村は誠と同郷の先輩で時々誠を誘い、近況などを聞きアドバイスなどを与えていた。しかし当の誠自身はと言うと志村にあまり好意を持ってはなく、ただうるさい先輩としか思っていなかった。


『ハァ~・・・今日も説教くらうのかね~

誘われると断れねぇよな~』


そんなことを思いながら憂鬱な気分になるいつもの喫茶店に到着した。

その喫茶店は古く、扉にはおきまりの「カランカラ~ン」と鳴るベルがついてある昭和の香り漂う喫茶店だ。

そんなベルが鳴る扉を開け中に入ると一番奥の席に座りポケットからタバコを出し、まずは一服。

そしてアイスコーヒーを注文し雑誌をめくりながら志村を待つ。

そうこうしている間に喫茶店のドアが開き志村が入ってきた。


『おはよう~』


『あっ!おはようさんです』


席についた志村もアイスコーヒーを注文しタバコを一服。


『ふぅ~・・・ 最近どうや?』


『まぁ~いろいろとやってます・・・』


『いろいろって何をやっとんのや』


『・・・ま~・・・いろいろと・・・なんとなく』


『ふぅ~・・・またなんとなく、か。』


タバコの煙を天井に向かって大きく吹かしながら志村は話し続けた。


『そういやお前仕事見つかったか?』


『いや、まだです。いいのがないんです』


『…お前働く気いないやろ?

何回言うても聞かんな。働く気いあんなら大抵の事はできんぞ』


『ハァ~・・・』


志村と会うと決まってそんな会話になっていた。

志村は誠にはとにかく口うるさかった。

志村もまた若い頃から苦労しており、誠を見ていると何年か前の自分を見ているようでほうっておけないらしい。

しかしそんな志村の思いはなかなか誠には伝わらないでいた。


説教じみた話しが小一時間続き、

誠はと言えばただ頷くばかり。

ま、結局頷く事しかできないのだ。


『俺はお前のことを思って言うてんのやで。

このご時世、他人のことなんか構ってられやんのが現実やからな。

とにかく早いこと仕事みつけろよな』


関西弁が抜けない志村はそう言い残し帰っていった。


『チッ!ほっといてくれよ!

いつもいつも本当にうるさい人だ。

わかっちゃいるけど、なんだよ!

だいたいな〜お前の事を思って、と言う人に限って自分の事しか考えてねぇんだよ!

どっかに行っちゃえばいいのに』


そう思いながら氷で薄くなったアイスコーヒーを飲み干しタバコを吹かし白いため息をつく。


実際、仕事以外にもやるべき事はたくさんあった。それにやめるべき事も。

志村と会い、話を聞く度にそれら問題が襲いかかってくるのだ。

誠からすれば問題を掘り起こさないでくれ。

そう感じているのである。


そんな時、憂鬱な気分を吹き飛ばす声が誠の耳に入ってきた。


『ま・こ・と!』


『あっ! ユキちゃん!』


偶然にもそこに友達のユキがいたのだ。


『聞いてたよ~志村さんとの話し~。

本当にいつもうるさい人ね』


『聞いてたんだ~

ほんとほんと。うるさすぎるよ。

自分の事でも心配してろよ』


ユキは誠と同い年でいつも優しく、それにすごく可愛い女の子だった。

活発でスタイルもよく、女性の魅力を存分に持っていた。

そしていつも誠を励ましてくれていた。


『あまり考えちゃダメよ。

考えてもすぐには答えなんて出ないわよ。

それに誠はまだこれからよ』


『うん! そうだよね!

ありがと』


少し照れた顔をした誠を見てユキは優しく微笑んだ。

照れた感情をタバコで紛らわそうとタバコの箱をつかむが空だった。

予備のタバコがあるはずと上着のポケットを探ったとき・・・



『あっ!!』



そう。。。


ポケットに昨日のあのメガネを入れたままなのだ。 誠は急に昨日の出来事を鮮明に思い出した。


(そうだ・・・スイッチを押すと女性が裸に見えると・・・それがもし本当なら・・・)


誠はまさかと思いながらも、


(もし本当に裸が見えるなら・・・)

(もしユキちゃんの裸が見えたら・・・ )


興奮で胸が高鳴りそれが嘘だとしても実行せずにはいられなかった。

そして誠はドキドキしながらポケットからメガネを取り出し、しらじらしいセリフをスタートの合図にした。

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