第2話

ありふれたアパートの二階角部屋。

二十一歳で田舎を出て上京し、それからずっと住んでいる。

別に夢なんてなかったがなんとなく東京と言う街で暮らしたかった。


誠はこの「なんとなく」が似合う男である。

口癖というものではなく心癖というべきものか。。。

「なんとなく」で動いていることが多く、それが良いか悪いかよりとにかく楽だった。


部屋の中はと言うと頭の中もゴミ置き場なら部屋もまたゴミ置き場のように散らかっていた。

食べかけのパンや服、本、CD、何に使うのかわからない小物や景品類など。

それらが無造作に散らばっていた。

収拾がつかないその部屋は誠の頭の中そのものだった。


そんな住み慣れた部屋に着き、お気に入りの上着を脱ぎハンガーにかけ、ポケットのタバコを取り出す。


『うん? あっ!そうか。

メガネを拾ったんだ。

ふふ・・・消えた男のメ・ガ・ネ・っか・・・』


誠は妙な笑みを浮かべながら消えた男がかけていたメガネを手にとり、鏡の前に行き冗談半分でかけてみた。


『度は入ってないのか・・・ 

しかし今時こんなメガネをかけるかね~

それに全然似合わな、、、

うん!? な、なんだ!?』


メガネをかけた自分にビックリしたのではなく、なんと、そのメガネのレンズに文字が浮かび上がっているのだ。

それは小さく、少し長い文章で書かれていた。


『なんだよこれ。

こんなメガネあんのかよ?』


誠は一旦メガネを外し

何かトリックがあるのか?

おもちゃのメガネなのか?

じっくりと探りはじめた。

文字は外側からは見えないらしい。

そして何やらレンズの縁の部分に小さなスイッチみたいなものがついているではないか。


『なんだなんだ~このスイッチは~ 

いったい今日はどういう日なんだよ』


そしてそのスイッチを押してみるが何も変わる様子はない。

そしてもう一度かけてみた。

やはり文字が現れる。


誠はとりあえずその文字を読んでみた。



『何々・・・』


(このメガネはかけた状態で一人の女性に向かいスイッチを押すと10分間だけその女性の服が透けて裸が見えます。

しかし、1回押すたびにあなたにとって今大切なものがひとつずつ消えていきます。

そしてスイッチを押し女性が普通に見えたとき、このメガネの効力は無くなり、今のあなたにとって一番大切なものが消えてしまいます。そこにたどり着くまでの回数はその人により違います。

途中でやめる事も可能ですがそれまでに消えたものは戻ってはきません。

あなたが女性めがけてスイッチを押した瞬間にこの契約は結ばれます)


『ハァ〜?

女性の服が透ける?

バカバカしい。

そんなメガネがあるわけないだろ。

おもちゃにしても子供すら振り向かない品だな。それになんだ~大切なものが消える?

消えるわけねぇだろ!』


誠は呆れていた。

不思議な事と言えば不思議な事。

バカバカしい事と言えばバカバカしい事。

誠は迷う事なくバカバカしい方を選び、メガネを上着のポケットにまた戻した。

いつもならゴミ箱行きかその辺りにほったらかしにするくせに、なぜか上着のポケットにしまった。

そのめずらしい行動は密かに何かを期待しているのであろうか。。。

それとも、もうすでに何かが始まっているのか?


そして気持ちをニュートラルに入れ替え、

帰りに買ったコンビニの弁当を食べ風呂に入り、その日は眠りについた。

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