第10話 お互いにね
魔法少女の魔法という非現実的な攻撃を見た直後だった。
僕の視界にはナイフが映っていた。
高速で
「わ……!」
「魔物ではありません」冷たくてクールな、威圧的な声。「魔法少女ブラックナイン……あなたの命を、奪いに来ました」
そうして後ろ側の扉から現れたのは……これまた見たことがある人物だった。
えーっと、誰だったっけ……? たしか同じクラスの……
「わぁ……たしかあなた……
言われて思い出した。
目の前の少女は……黒装束に身を包んでいる鋭い目つきの少女は、
小柄の黒髪ショート……間違いなく
自己紹介のときの彼女は、とても明るそうに見えた。学級委員長でもやりそうな、明るくて元気で優しそうな女の子。
なのに今の目の前の
「
「いいえ」
「殺害予告……?」
「……そうですね。私のことは賞金稼ぎか殺し屋だと思ってください」
さらにヒロインの属性が増えた。アンドロイド、異世界転生者、魔法少女……そして最後に殺し屋。さすがに最後の追加だと思う。もう世界観がメチャクチャだ。
「簡潔に言うと……あなたには賞金がかかっています。あなたを殺せば、私は賞金がもらえる」
「へぇ……だからボクを狙うの?」
「はい」
「懸賞金はいくら?」
「1億」
「安く見られたね」高いだろう……って、魔法少女だから安いのか? 「まだ宝くじでも買ったほうが、確率高いと思うよ」
「普通の人間なら、そうでしょうね」
「自分は普通じゃないって言いたいの?」
「はい」
「怖いねぇ……」
怖いのはこっちだよ。僕のほうがよっぽど怖がってるよ。なんだこの状況。
……まったく今日はどうかしている。アンドロイドと異世界転生者に出会って……それだけでも驚天動地なのだ。なのに……今度は魔法少女と殺し屋?
もう、殺し屋のキャラが薄いって思ってるよ。現実世界にも存在しそうだと思ってるよ。普通の人だと思ってるよ。他と比べたらまともだよ。
「さて……」
「そう言っています。理解力が、低いんですか?」
「雑な挑発をどうも」そして
「……少し不都合ですが……ようやくあなたを見つけたもので」どうやら
「ボクと同じ考えだね」おや……? なんだか危ない方向に話が進んでいるのでは? 「ボクとしても、目撃者がいるのはマズイんだ。ボクが魔法少女だってことは、知られたくないから」
「……それは不注意でしたね。もっと、周りに気をつけてください」
「お互いにね」
「……そうですね」
勝手に話を進めるな。僕はどうしたらいいんだ。この状況で一般人である僕はどうしたらいいんだ。魔法少女と殺し屋のインパクトには勝てないよ。
月明かりが教室を照らす。
そして、
「……見られたからには、殺すしかありませんね」
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