第6話 ……ここは外国か?

「おいおい……」目の前の光景に、乱麻らんま先生が頭をかく。「こりゃ夢かい?」


 そう思いたい気持ちもわかる。僕自身もそう思いたい。入学式が楽しみすぎて夢を見ているのだと思いたい。だとするならば夢の中でも殴られているのは理不尽だが。


 教卓の上の光から、女の子が現れた。


 ピンク色の髪のポニーテール。現代日本には似つかわしくない重厚な鎧。そして腰の剣。


 その女の子は重力を無視して、教卓の上に降りた。いや……そのまま教卓に背中から着地して寝転がった。どうやら気を失っているらしい。


 教室は完全に無音だった。誰もが目の前の光景についていけないようだった。そりゃそうだろう。アンドロイドが自己紹介したと思ったら、今度は謎の光から女の子が現れたのだから。


「……なんかのドッキリか……?」乱麻らんま先生も動揺しているようだったが、対応するのが自分しかいないと悟り、「おーいお嬢さん。無事か?」


 謎のピンク髪の少女に声をかける。


 同い年くらい、だろうか。高校生くらいの人に見えるけれど……


「……生きてるよな……?」乱麻らんま先生は彼女の呼吸を確認して、「呼吸はしてるが……救急車か……?」


 あるいは警察か……いや、探偵か? それとも超能力を研究してそうな場所か? どこに連絡すればいいんだ。


「う……」そうこうしているうちに、ピンク髪の女の子が目を覚ましたようだった。「……ここは……」

「学校だよ」

「!」声をかけられたことに驚いたのか、女の子は教卓から飛び降りて、「何者だ……!」

「こっちのセリフだが」


 たしかに。


「私はアルステーデ・アイジンガーだ」律儀にも名乗ってくれるようだった。「なんだ……? ここは……どこだ?」


 ピンク髪の少女――アルステーデ・アイジンガーさんは教室を見回す。なんだか怯えているような動作だった。


「あー……」乱麻らんま先生が普通の人に見えてきた。「とりあえず……キミはなんだ? どっから来た?」

「……オリヴィエだ」

「オリヴィエ……聞いたことないな……」

「なんだと……?」そんなに驚くことか。「国で最大の城下町だ。知らないだと? ……ここは外国か?」


 なんだこれは……いきなり演劇でも始まったのか? なんでいきなり謎の外国人美少女が現れるんだ?


「お……」教卓に置かれていた名簿が光り始める。「なんだなんだ……今度は何だ?」


 乱麻らんま先生は名簿を開いて、


「……アルステーデ・アイジンガー……なんか、あんたの名前が名簿に追加されてるんだが……」


 どうやら生徒の名前一覧に、アルステーデ・アイジンガーという名前が増えたらしい。なんともファンタジーなことだ……さっきまでSFの世界観だったのに。


「……それが神の導きだというのか……」この人の言うことはよくわからん。「いいだろう……おそらく神が私をこの地に導いたのだ……この場所に所属しろというのが神の意志なら、私はそれに従うのみ」

「……お、おう……」


 そうしてアルステーデ・アイジンガーさんは空席に座った。どうやら、このクラスに仲間が増えたらしい。


 ……


 ……


 なんだこれ。全然理解が追いつかん。意味がわからん。

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