第4話 NS9000型調査探索機閃光仕様Rです

 というわけで、真一まいちと一緒に学校に向かう。


 高校生活初日からとんだ面倒事に首を突っ込んだものだ。真一まいちとも約束したし、もうこんな面倒事は避けよう。


 真一まいちの言う通り、入学式はすでに終わっていた。体育館に行って後片付けをしている人にクラス分けを教えてもらって、教室に向かう。


「同じクラスだね」同じクラスとなった真一まいちが階段を上がりながら、「これから1年、よろしく」

「1年どころじゃないけどね」


 すでに十数年真一まいちとは一緒にいる。そしてこれからも、真一まいちとの腐れ縁は切れることがないだろう。


「さて……着いたね」1年B組の教室の前で、真一まいちが言う。どうでもいいが、なんでクラス分けがアルファベットになるのだろう。「準備はいい? 入るよ」

「いいよ」

 

 すでに教室には大勢の生徒が入っている。無事に入学式を終えた生徒たちが席に座って先生の話を聞いているのだろう。


 そんな状態の教室に入るのは少し勇気がいるが……まぁしょうがない。この1日だけの辛抱だ。


「遅れましたー」


 元気よく、真一まいちが扉を開けて入っていく。たぶん真一まいちも怖いから、空元気だとは思う。


「やぁおはよう」真一まいちの声に反応したのは、教卓に立つ女性教師だった。「よかった。これで揃ったな」

「あちゃ……私たちが最後の2人ですか」

「ああ。入学式から遅刻する生徒は珍しいからな」


 なんかイケメンな感じの女性教員だった。スタイルも良いし……一部から人気がありそうだな。


「おや……」そんな教師は僕の顔を見て、「大怪我してるね……保健室に行く?」

「大丈夫ですよ……」

「ふむ……教師として怪我の原因を聞きたいんだが……」

「ちょっと宇宙人に襲われましてね……」

「はは。そうかそうか」理由を言いたくないと察してくれたようだった。「まぁいい……空いてる席に座りたまえ。座席指定は特にないよ」


 というわけなので、空いていた窓際の席に座らせてもらう。真一まいちとは少し離れた位置になってしまったが、まぁしょうがない。遅れてきた僕たちが悪い。


「さて……」教員は黒板に文字を書く。「快刀かいとう乱麻らんま


 黒板に書かれたのは四字熟語だ。意味は……なんだっけ。複雑に絡み合ったような物事もすっぱり解決してしまうこと、だろうか。


 先生の座右の銘か何かだろうか、と思っていると、


「私の名前だ」ちょっと教室がざわついた。「快刀かいとう乱麻らんま……それが私のフルネーム。本名だぞ。乱麻らんま先生と呼べ」


 女性教員――乱麻らんま先生はそう言って笑う。

 快刀かいとう乱麻らんま……なんとも変わった名前だ。僕の名前もそこそこ珍しい部類に入ると思うが……快刀かいとう乱麻らんまほどじゃない。


「さて……名前は乱麻らんまで……好きなものは酒。寝ること。ダラダラすることだ」ダメ人間に聞こえる。「苦手なものは……勉強だ」


 それが教師の言うことか……って、いや……苦手なことを乗り越えて教師になったということなのか? わからん。


 なんにせよ……強烈な人が教師になったもんだなぁ……おそらくこの人がこの教室でもっとも目立つ人物なのだろう。名前も性格も、主人公になり得るタイプの人だ。


 さぁあとは学生の自己紹介……名前と趣味くらいを言って無難に終わる……


 事件は左列の一番前の女子生徒が自己紹介をしたときに起こった。


「NS9000型調査探索機閃光仕様Rです」


 ……


 なんだって?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る