第3話 シンイチじゃなくてマイチだよ
その後、どうしてもお礼を渡したい女子中学生VSどうしてもお礼はいらない僕の無意味な口論が続いた。しかし結局女の子が折れて、そのまま去っていった。ありがたい。
結局僕は立っていられなくなって、その場にへたり込んだ。
「……相変わらず無茶するよね……」
「やり返せば、勝てるのに」
「……なんでそう思うかな……」完全に過大評価だ。「相手は5人だから……勝てないよ」
「……キミの強さを私しか知らないってのは、ちょっと悔しい」だから過大評価だって……「たまには返り討ちにしたっていいんだよ?」
「……できたらやってるよ……」
「強情だなぁ……」
「それはどうも……」
「でもさ……」
「……わかったよ……もう二度としない。自分を大切にする」
「……どうだか……その言葉も何回も聞いた」
「……そうだっけ?」
「そうだよ。私がこうして救急セットを持ち歩くくらいには聞いた」
なるほど。なんで
……思えば
「よし……治療終わり」いつの間にか、傷の手当が終わっていた。「さて……これからどうするの?」
「入学式に行こうかと……」
「とっくに終わってると思うけど……」そんな長いこと殴られてたのか……「しかも……そんなボロボロで行ったら、クラスメイトにビビられるよ? キミの青春ラブコメは始まったばかりだというのに……」
「ラブコメね……そんな面白い青春が、僕の人生に舞い降りるかどうか……」
「降りるんじゃないかなぁ……だって、キミは面倒事に首を突っ込むからね。青春ラブコメがほしいなら、行動あるのみさ」
別に青春ラブコメなんていらない。
「さて……じゃあ、入学式に行く?」
「……まぁ、一応ね。クラス分けと……自己紹介があるかもしれないし」
自己紹介は翌日かもしれないが。
「あ、自己紹介かぁ……よし、私の鉄板ギャグの出番だね」
シンイチじゃないよ
……あれギャグだったのか……アホだからやってるんだと思ってた。
「さーて私達の青春ラブコメは、どんな未来が待ってることでしょうねぇ……」
「大したものは待ってないよ」
一般的な人がいて、一般的な高校生活を送ると思う。それを青春というのだろう。平凡な青春も、また青春なのだ。
……
いや……入学初日からボロボロの状態で現れるやつは注目されるだろうか。そうなったらちょっと面倒だな。でもまぁ……それで僕のことを避けてくれる人が増えれば好都合だろうか。
ボコボコの顔についての言い訳を、考えておかないとな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。