7本目
わたしは父に連れられて家に帰ってきた。帰ると兄弟達がわたし達を迎えてくれる。
「アーリャ、洗礼はどうだった? どんなジョブだった?」
このやんちゃそうな男の子はひとつ上の兄、リュナン。体を動かす事が好きでしょっちゅう外で駆け回っている。
「へぇ、林業師なんだ……ごめん、よく知らないや」
この利発そうな男の子は長男のリューイ……見た目通り大人しくて読書が好き。
「確か木を育てるのが得意な職業よ……まぁ、何にせよ無事に洗礼を終えられて良かったわね!」
ふくよかなこの女性はお母さん……痩せれば美人に見えるんだけどね……見た目だけはオカンって感じかも? なかなかパワフルで優しいお母さんだ。
「ほらほら、二人とも勉強の時間よ」
「はい」「え~」
一通り洗礼式の事を話し終えた後、お母さんの合図と共に解散になった。
「旦那様、ミケロ商会の使いが……」
「おお、もうそんな時間か……それじゃアーリャ、いい子にしているんだぞ」
「はーい」
父さんは男性従業員と一緒に行ってしまった。わたしは自分の部屋に戻る……そう、自分の部屋がちゃんとあるのだ。
もちろん前世の時のような自分好みにコーディネートした部屋じゃないので、シンプルな……正直に言えば地味なお部屋だ。
それでもこの時代に、しかも3歳児には贅沢だと思う。
ソファーに勢いよく座る……なんだか行動が年齢に引っ張られている気がするんだよね、わけもなく走りたくなったりするし……なんでだろう?
気を取り直してわたしは自分のギフトジョブについて考える。考えれば考えるほど『木』ってなんなの! って気持ちが浮かび上がってくる。
もう、転生した後になるまで自分自身が『木』になるなんて思っても見なかったんだから。
「もう木の役なんて前世でこりごりなのに……」
あ、まずい、口に出した途端に泡のように前世の思い出が湧き上がってくる……思い出したのは小学校の演劇発表会の時だ。
あ、だめ、感情があふれ出しちゃう! もう、子供ってどうしてすぐ泣いちゃうんだろう?
わたしはもう会う事ができないみんなの事を……あの人の事を思い出して静かに泣いた。
「ふぅ、もう落ち着いた……わたしはへいき」
涙が止まった後で自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
改めて、わたしのギフトジョブについて考える……そもそもギフトジョブってどうなるの?
ゲームみたいにスキルとかあるの? でもお父さんもお母さんも……お兄ちゃん達も何にも言ってなかったよね?
WEB小説でよくある
「こほん……ステータスオープン!!」
……部屋に現れたのはステータスじゃなくて沈黙だった。
わかっていたんだから、そう、これはこどもの遊びだから恥ずかしくないもん。
どうやら異世界のゲームシステムみたいのはないみたい。だとすると、ますます分からないよ。スキルはスキルでも
……するとノックが聞こえる。
「アーリャお嬢様、失礼して宜しいですか?」
「はーい」
返事をすると女性従業員が入ってくる。
「これ、旦那様がギフトジョブに役立つかもしれないと、持ってきました……苗木は明日、お嬢様に選んで貰うって言っていました」
「わぁ、おっきな鉢植えだねぇ……こんなのあったんだ」
女性従業員が大きな鉢植えを部屋の隅に置くと、もう一人の男性従業員が入ってきて、袋に入った土を鉢植えに入れていった……そして、作業はあっという間に終了した。
「それでは失礼致しました」
「ありがとうね」
バタンと扉が閉まるとわたしは鉢植えをのぞき込んだ……当然、中には土しか入っていない。
「お父さんも偽装工作が本格的だね~でも、ありがたいよ」
きっと明日に何か適当な苗木を選んで育てる事になるのだろう……でも、本当に育つのかなぁ? 実際に林業師のジョブってわけじゃないもんね。
……結局、その日はギフトジョブについては何も分からずじまいでした。
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ストックもないのでお仕事が終わってから執筆です。
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