第三章 木は職業じゃないと思います
6本目
気がつくとわたしは異世界の……まさにハイでファンタジーな世界に転生していた。
生まれてしばらくは何だかぼんやりとしていたけど、だんだん意識が鮮明になって、たぶん1年経つ頃には今と同じ色々と考える事が出来るようになっていた。
世界の文明レベルはローマ時代が近いんだと思う……そんなに詳しくないからあまり突っ込まないで欲しいけど……中世の時代だったらきっとわたしは耐えられなかったかもしれない。
家は日用雑貨を中心とした商店……いわゆるなんでも扱っているお店で、この街ではそこそこの大手みたい。
家族構成は5人……父さん母さんはもちろんで、子どもは他に2人の兄がいる。
長男が跡継ぎだけど、大人になる頃にはお店を増やすみたいで、次男にもお店を任せる予定みたい……だから跡継ぎ問題でギスギスする事もなく家族全員仲良しだ。
おかげで今の所不自由はなく暮らせているの……あ、汲み取り式おトイレはもう慣れたから。
なにより、お家が裕福だからあるんだよね……おふろ。まだ一人で入らせてもらえないけど毎日お風呂に入れるのは幸せだよ~。
わたしって今まで当たり前の幸せを気付かずに過ごしていたんだね。
衛生管理もしっかりしているお陰で街は嫌なにおいもしないし、公衆浴場もあってみんな清潔だし病気が流行ったりも今の所聞いた事がない。
ここまでは異世界ファンタジーと言うよりただの大昔の地球と変わらないんだけど、ちゃんとファンタジーってところがあるんです……この世界には神様がいるんだよ。
そして神様に仕える神官様は神様の声を聞く事が出来るの……そして神官様でなくともその声を聞く事が出来る時があります。
それが生まれて3歳になった時に神様に祝福を受けて、ギフトジョブを授かる事が出来るのです……そして、そのジョブがあればその道で成功間違いないと言われているのです!!
はぁ~それがこんな事になるなんて……
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
「すまないアーリャ、父さん
「聞き間違えではありません、紛う事無き
しーんと沈黙が訪れる……ねぇ、わたし何か悪い事したのかな?
「お、おめでとうございます、神はいつでもあなたを見守っていますよ?」
「ちょっと、神官様、目を逸らしながら言わないで下さい!」
この神官様さっきまでの落ち着いた雰囲気の聖職者だったのが、オロオロしたおじいさんに変わってしまっているよ……しかも疑問形だし。
「えーと、神官様、ギフトジョブで
「そ、それは……私にもわかりません。今までに無かったギフトジョブのようです」
父が気を取り直して質問すると、神官様は戸惑いながらもなんとか答える。
「分からないジョブを貰ってしまい、わたしはどうしたらいいのでしょう?」
「そ、そうだな~まぁ、必ずしもギフトジョブの職業になる必要は無いから、心配する必要は無いぞアーリャ」
「え、そうなの?」
そうなんだ、よかった~WEB小説みたいに不遇だったり不明なジョブだからって家から追放されたりしないんだね? でも他の人に聞かれたら何て言えば良いの?
あなたのギフトジョブはなに?
はい、わたしのギフトジョブは『木』です!!
いや~っ!! 神様、ジョブチェンジをお願いします!!
「しかし、これでは他の者への説明に困りますな」
「そうですな、何か方法があれば……」
わたしがもだえている間もお父さんと神官様の話は続いている。神官様は顎に手を当てて考えると……
「過去に林業師というジョブを授かった者がいたはずです……たしか、木を植えて育てるのが得意になる特性を持っていました」
……なんて、代案を出してくれた。林業って前世にも普通にあったよね?
「なるほど本来のジョブの事がわかるまで、当面はそのジョブで話しておきます」
「ジョブを偽った事が罪にならぬように私からも一筆したためておきましょう」
「おお、神官様、ありがとうございます」
「いえいえ、きっとそのギフトジョブも素晴らしい職業である事を祈っておりますよ」
……こうしてわたし達は神殿を後にしたのでした。
まぁ、根本的な問題は何にも解決していないんだけどね! いったい何なの、木って!!
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説明回なので物語は特に動きはありませんでした。
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