六日目:ささやかなる反抗
目を覚ますと、そこは布団の中だった。学校には行っていないから、家の前に立っているということは無かったようだ。机の上には、もう冷めてしまった朝ご飯がある。
ゆっくりと体を起こし、目を覚ました。寝覚めは悪いけれど、胃が痛むことは無い。明日は学校に行けそうだ、いや、行かなくてはならない。
大きく深呼吸をする。文芸部のグループを見れば、そこにカリヤのアカウントは存在しなかった。もう稼働しなくなったグループには、
母親が部屋に上がってくる。ノックをされて、躊躇無く扉が開かれた。そこにはご飯が残っているわけだから、当然顔を顰めたのだった。
「結局食べなかったんだ。学校にも行かなかったみたいだし……」
私は黙り込む。母親は頬に手を当て、困ったような顔で話し続けた。
「最近どうしたの? 勉強はしてないみたいだし、夜帰ってくるのは遅いし、挙げ句にご飯まで食べないし……私心配なんだけど」
「……心配しないで。私は大丈夫だから」
「大丈夫大丈夫って、本当に大丈夫なの? 私はマキのことを思って──」
「──大丈夫だって言ってるでしょ!」
言ってしまってから気がつく。自分にしては大きな声を出してしまったようだ。これは、いけないことだ。でも、すぐに、ごめんなさい、が言えなかった。
母親は怒るでも泣くでもなく、驚いていたようだった。私は冷めたご飯を突きつけて、母親を部屋から追い出す。扉をバタンと閉めて、背中を預けた。母親は扉を叩くでもなく、しばらくして階段を降りていった。
息が荒くなる。でも、胃の痛みが無くなっていたことに気がついた。
──へー、やるじゃん。面白いね!
そんな誰かの声が、聞こえてきたような気がした。
私は布団に戻り、耳を塞ぐように強く被った。それは内なる声を掻き消すためか、下から聞こえてくる母の声を掻き消すためか。とにかく、私は気がつけば「良い子」ではなくなっていた。それが気味悪いような、快いような、二つの感情でいっぱいになってしまった。
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