第23話 だいにのげえむ①

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 目が覚めた。意識が現実へと引き戻される。徐々に視界が開けていき、意識が着地する。


 白い部屋での二度目の目覚め。


 やはりどことなく落ち着かない、身動きの出来ない水槽か何かの中にいるような不安定な心持だった。

 昨夜、琴琶の幻覚を見たせいか。

 果たして今僕がいる現実は昨日と、一昨日と、いやこの部屋に閉じ込められる前と地続きの現在なのか。そんな根本的な疑念さえも氷解しないままに胸の奥に蟠っている。


 手痛い停滞。そんな感じだった。


《第二のゲーム、食糧確保、です》


 だから、唐突な告知に空耳かと思った。

 選挙で政治家のマニフェストに翻弄される大衆みたいな、気になっている異性の好みを把握する前の気持ちみたいな、期待と不安が入り混じった都合よい幻聴なんじゃないかと。


 正直、限界が近かったのだ。

 この部屋に閉じ込められた緊張や椅子に縛り付けられている状況にではない。

 ……空腹の。

 目の前で幼馴染が焼け死のうが全身を椅子に縛り付けられていようが白い部屋に閉じ込められていようが腹は減る。

 何でお腹が減るんだろう。人体って不思議だなあ。こんな時でもしっかりとお腹は減る。


 睡眠とか生殖行為とかと違って、食事で得られる快感なんて微々たるものじゃなかろうか。美食家は別にして、大抵の人は明日何を食べるかなんてそこまで深く考えちゃいないだろう。


 そう、たとえば、チューブを点滴みたいに腕に繋いで食事と等価の栄養素が摂取できる機器が開発されたとして、一部のモノ好きや仕事中毒者(ワーカホリック)以外にはあまり流行らないんじゃないかと思う。


 それはやはり味気ないからだろう。口に運び、嚥下する……食べている感じがしないからだろう。


 どんな食べ物だとしても見た目は大事だ。たとえ地の底の監獄でも、白い部屋でも。


 ずっと開かない電子レンジの前で縫い留められたかのような拷問に等しい時間に差した一筋の光明。見ると僕以外の五人……ああ、五人になってしまったのだった……も、ほんのわずかな希望をその顔に滲ませていた。


 早く続きを。誰もが《声》にほんの少しだけ期待しているように見える。飼料を心待ちにする家畜みたいだな、と、失礼ながら僕は思った

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