第13話

「ぐはぁ……なにが……ひっ、血が……ぎゃああああ⁉」


 そう言って叫ぶ、ねっとり男を見下して、俺は拳を握りしめていた。


「お、おまえ! 何をしたのかわかってる……」

「ああ、俺の連れに嫌がらせしてた男を殴り飛ばした。以上」

「……んなっ」


 そう言いきった俺を見て、ねっとり男は目を見開いていた。


「……俺は、……俺はこの街の商業ギルドのギルド長、ロバート・ハンセンだぞ!」

「そうか、それがどうした?」

「それがどうしたっ……だと?」


 俺がそう言うと、男は驚いた顔をする。


「お、お前っ! 俺は、商業ギルドのギルド長ロバート・ハンセンなんだぞ!」 

「だから誰だよ」

「商業ギルドのギルド長であるこの俺、ロバート・ハンセンを殴り飛ばしてただで済むとでも思っているのかっ⁉」

「だから誰だって聞いてんだよっ⁉」

「ヘブッ!」


 そう言って壊れたラジオのように喚くロバートを、もう一度殴り飛ばすとロバートは、白目をむいて倒れた。


「……よし、とりあえずうるさくなくなった……大丈夫だったマナちゃん?」

「ほへ? え、えっと……そうなのですね~」

「とりあえずここから離れ……」

「ちょっといいかな?」


 そう言って、マナちゃんの手を掴んだ俺の肩を、誰かがたたいた。


「へ? 誰?」

「あ―私はこの街の衛兵のビッツって奴なんだが……お嬢ちゃん良くないよ~イライラして手も手を出すのはさ~」


 そう言ってビッツと名乗るおっちゃんはにこにこしながら声をかけてきた。


「ひょえっ⁉」

「とりあえず、お嬢ちゃんは一緒に来てもらおうかな?」


 そう言って、ビッツのおっちゃんとその仲間たちの衛兵が俺を取り囲んだ。


 くっ、このままじゃ俺捕まっちまうのか⁉

 いや、異世界来てまで捕まりたくなんてねえぞ!


 ……まあ、俺にはチートスキルがあるから逃げるのは簡単だけどな。


「マナちゃんっ、逃げるよ」

「ふぇ!? 逃げるのですっ⁉」


 そう言って逃げようとする俺の前に衛兵たちが立ちふさがる。


「ふ、お前たちに俺が止められるとでも思っているのか?」

「ああ、余裕だと思ってるぞ」

「そうか……くくく、残念だがお前らは俺の力の一パーセントも知らない。この意味が分かるか?」

「何?」

「……つまり、こういう事だっ! えーい、てりゃぁ!」


 とりあえずこの場を切り抜けるっ‼


 ペチンッ。


「……あ、あれ?」


 そう言って俺は、衛兵を殴りつけるが、まったく衛兵にはダメージが無い……むしろ……


「いってぇえ⁉」


 俺の拳が、真っ赤に染まる……完全にダメージがこっちに帰ってきてやがる。


「……とりあえず、お前連れて行くな」


 そうして痛がる俺を見て、衛兵は何処か呆れたように言った。


「ぎゃあああ、なんでこうなったああああああ⁉」


 こうして、俺は衛兵に連れられて連行され……


「……ついでに君も来てもらおうか」

「……ほへ? 私もなのです⁉」


 ついでに、俺の知り合いという事でマナちゃんも衛兵に連れていかれることになったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

望みがかなってTS美少女として異世界に転生することになった俺。だけどチート能力が全裸で最強ってどこのエロゲですか? 青薔薇の魔女 @aomazyosama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ