第9話
「はい、こちらが貴方のギルドカードです」
そう言って手渡されたのは、木で作られたカードだった。
「これがギルドカードか……」
軽く触れてみるが、結構しっかりしている。
カードの側面には、バーコードのような溝があり、表面にはまるで芸術作品のような植物の意匠が施されている。
「ギルドカードについての説明は……マナちゃんがしてくれるか」
「はいなのです!」
「それじゃ……私も別の仕事があるから、マナちゃん頼んだよ」
「はいなのです!」
そう言って、ビシッとマナちゃんは敬礼した。
「……え? マナちゃんが?」
「一応私もギルドの臨時職員って立ち位置なのですよ」
「そうだったんだ」
「そうなのですよ~とりあえず、向こうの方でご飯食べながら話すのです~まだ朝ごはん食べてないのですし」
「そう言えばそうだったね」
そう言われると、お腹がグーっと音を立てた。
「それじゃ行くのです~」
そうして、俺達は酒場に行くと、適当な席に座って食べ物を注文した。
「ここは冒険者が良く来るので、安くてたくさん食べれていいのですよね~……あんまり私いがいギルドのみんなは使わないのですけれど」
そんなこと言いながら、運ばれてきたお肉にかぶりつくマナちゃん。
「……まあ、そうだろうね」
「それじゃあ、軽くギルドについての説明をするのですよ」
そう言ってマナちゃんは、ギルドのシステムやルールについて一通り話した。
「……と、いうルールがあってそれさえ守ってもらえれば問題ないのです。あ、あとなのですが、受付嬢さんたち玉の輿を狙っているのでランクを上げれば受付嬢さんと結婚できるかも……って、これはパラドさんには関係なかったのです」
「……お、おう……そうなんだ」
なんか、受付嬢の設定でそう言うのがあるラノベあったけど……この世界でもそう言うのあるのか、そしてギルド側の人間がそれ暴露しちゃうのか。
まあ、とりあえずそう言うことは置いていて……
「……それで、肝心のランクを上げる方法って?」
「あ、言い忘れてたのです」
おいおい……
「ランクを上げる方法なのですが、まあ一般的に言われているようにギルドのクエストをクリアして行って貢献度を貯めていくことでランクが上がるのです」
そう言って、マナちゃんはギルドの端、紙の束が掛けられた壁を指さした。
「アレが、クエストボードになるのですよ。クエストは一部を除いて自分のランクと同じか、一つ上のクエストを受注できるのです。頑張ってランクを上げていってくださいなのです」
そう言って、マナちゃんはニコッと笑った。
……おおう、いきなりその笑顔は卑怯……
「あっ……油が跳ねちゃったのです」
「……おっ……」
おっぱいにかかった……
「マナちゃん、拭くよ」
「あ、ありがとなので……ちょっと、長くないのです?」
「ソンナコトナイヨー」
そう言って俺は、フニフニと堪能した。
凄い気持ちよかった。
「も、もう大丈夫なのです。こ、こほん……それでは説明を続けるのです」
そう言って小さく咳払いして、マなちゃんは話を戻した。
「ウッド、ブロンズ、アイアン……って感じに上がっていくのですよ。因みに最上級は、オリハルコンって呼ばれているのです」
「ほうほう、オリハルコンが最上級か」
「ちなみにオリハルコン級の冒険者さんのカードはオリハルコンで作られている……らしいのです」
「ほへ~」
オリハルコンか~……ってことは、結構ギルドカードってお金がかかる?
俺が持ってた塊でも国家予算レベルって言ってたし……
「……因みになのですが、オリハルコンになる為にはオリハルコンゴーレムを一体必ず倒さなくてはならないという制約があるのです」
「そうなんだ?」
「そんな制約があるせいで、最近はオリハルコンの冒険者いないのですよねぇ~」
そう言ってマナちゃんはため息をついた。
そう言えばマナちゃんが、オリハルコンゴーレムを倒すのは難しいうえに、数が少ないって言ってたっけ?
「……オリハルコンになるには、運と実力が必要なのか」
「まあ、確かにパラドさんはオリハルコンゴーレム倒しているのですが……まだ、必要な一項目しか満たせていないのです」
「そっかーん? ってことはオリハルコンゴーレムを倒す以外にもなんかしなくちゃいけないことがあるの?」
俺がそう尋ねると、マナちゃんはコクリと頷いた。
「そうなのです……これはゴールドランクから上にかけての制約になるのですが、どこかの国、貴族などに認められなくてはランクアップできないという制約もあるのです。後は、さっきも言ったようにギルドに対しての貢献度を稼ぐ必要があるのですよね。それさえクリアすればすぐにでもなれると思うのですよ」
「……それ、簡単に言うけど結構難易度高くね?」
「あはは~、頑張れなのです~」
そう笑って、マナちゃんは油滴るお肉にまたかぶりついたのだった。
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