第54話 幽閉

 私はガーネットさんとグレイに、「楽園」の話をした。そこでエスメラルダ様に会ったこと、両親が聖女様のお世話係として働いていたことを。


 彼女たちは、「禁足地」について調べようとしていたが、具体的な情報は得られていなかったみたいだ。そのため、この話には驚いていた。



「なるほど……。外に秘密を洩らさないようにするための『楽園』――、というよりは『監獄』だな」


「秘密ってどういうこと?」


 私の頭はグレイの理解に追い付いていなかった。


「聖女を務めた者を同じ場所に囲っているのは、おそらく『女神ソフィア』について知ってしまうからなのだろう。そこで暮らしている人も同様に『なにか』を知ったために幽閉されている、と考えるのが妥当だ」


 聖女様はその役割から必ず女神ソフィア様と接点をもつ。その情報を外部に洩らさないようにするのが楽園の存在意義。


「オレの親は教団の職務中に、不自然な事故で亡くなっている。もしかしたら、楽園にいる人と同じような『なにか』を知ってしまったからかもしれん」


 グレイの――、だから、私の両親の話のときもあんな言い方をしたんだわ。


「だっ、だけど、グレイの親御さんだってそれなら楽園に送られるはずじゃ?」


「聞き訳が悪かったのかもしれんな、オレの親は……、あくまで予想だがな?」


 明言を避けてるけど、それって教団の人に殺されたってことよね……? 事故に見せかけてってことなの?


「『反・聖ソフィア教団』の人間のほとんどは、グレイのように、教団関係者の身内を不自然なかたちで亡くしたり、行方不明のままになっている、といった者の集まりなんです」


 ガーネットさんはこう補足をした。最後に「私は違いますが……」と小さな声で付け足して――。



「代々の聖女が揃って同じ場所に幽閉されている以上、『女神ソフィア』に絡んでの秘密があることは間違いない。だが、ボルツの予想していた、『聖女が依り代』というわけではなさそうだ。だったら一体なにを隠してるんだ?」


 ガーネットさんもそれに関してはわからないようで首を捻っている。グレイも「なにか」に対しての予想は持っていないみたいだ。


 だけど、私は……。



◆◆◆



『ノワラを連れ去った者たちの間者がきっとこの教団の中にいるでしょう』



 ワタシが女神様にノワちゃんの居場所について問い掛けたとき、「無事に帰ってくる」ともう1つ、女神様はこう答えた。


 ワタシは一度、大きく息を吸った。



「オラァッ!!」



 ――女神様も驚いちゃったかな?


 少しの沈黙。


 サフィールが飛び込んでくる気配はない。やっぱりこの「ご神託の間」は音や声が漏れないようにできているんだ。


「女神ソフィア様! ワタシが知りたいのはそういうのじゃないの! ノワラの居場所さえわかったらそれでいいんだよ!」



『残念ながらノワラの居場所は私にはわかりません。ですが、無事に戻ってきます。そして、聖女を連れ去った者たちを手引きした者が教団内に必ずいるでしょう』



 女神様はノワちゃんが無事だと2度も言った。神様の言うことなんだし、間違いないよね?


「わかった! 女神様を信じるよ! だけど、居場所はわかないのに無事に戻ってくるとか間者がいるとか、どうしてわかるの?」


 なんかワタシは、目の前に先生でもいるかのように話をしていた。女神様相手にこんなでいいのかな? あとで怒られたりしないよね?



『それは――、たくさんの情報から予想ができるからです』



 ――えっ? 神様でも予想とかすんの? 未来が見えるとか遠くが見えるとか心が読めるとか……、そういうのじゃない系ですか?



 ワタシは頭にが湧いていた。これは口に出したらいけないのかもしれない。だけど、なんていうか、今神様とお話できている勢いで言ってしまった。


「女神ソフィア様は……、なんですか?」

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