第2話

対岸に着き、暫く歩くと、両側は近代的な建物が並んでいた。線路の側道に人の姿が無い。止まっている車はあるが、走っている車は見当たらない。静かだ。

時々鳥が空を遮る。カラスの叫びだけが聞こえる。

俺は線路の柵を乗り越えた。側道までは2メートル足らず。飛び降りる。

目の前のビルにはコンビニがある。俺は辺りを見渡す。工事現場で作業ロボットが停止している。その足元には鉄パイプが転がっていた。俺は鉄パイプを拾い上げ、コンビニに入る。モニター画面が並び、その下にセンサー、更に下には投下口がある。食品、ドリンク、日常雑貨、ホビーなどのモニターが並んでいる先にとびらがある。メンテナンスルーム、関係者以外立ち入り禁止とある。広い廊下だけのスペースの先に扉があった。

俺は無視して扉を開いた。薄暗いスペースに入ると照明がつく。ビル全体がコンビニの倉庫と冷蔵庫になっており、高速移動のレールが商品を移動する仕組みだ。

俺は通路を移動し、ビールを発見した。ビールは冷蔵スペースにある。周囲はガラス張り。俺は構わず鉄パイプを振り下ろした。簡単に割れて、俺はビールを掴んだ。ついでにすぐそばにあったスナックのスペースも叩き壊し、ポテチとチョコレートを掴み取り、メンテナンスルームを出た。当たり前だが、自動扉はロックしている。俺は力一杯鉄パイプを叩き込み、硬いガラスをぶち破る。警報が鳴らない。やはり何かが変だ。外には人影一つ無い。


俺は乾いた喉をビールで潤しながら、遠慮なくゲップをした。そしてポテチを貪りながら動かない車の隙間を通り抜けながら、目的も無く歩いた。

車に乗りたいが、全て自動だから使い物にならない。IDもスマホも持って無いからタクシーも動かせない。

相変わらず誰もいない。

ところどころに作業用ロボットが停止している。どれも動いていない。

日差しは強いが、日陰は涼しい。俺は街路樹の日陰に腰を下ろし、ポテチを貪り食った。ビールすぐ空になった。辺りを見回すと、歩道の先に何かが蠢き、近づいてくる。キィーキィーと音がする地面を這う様に、歩道を移動して来る黒い影。先頭が50メートル程に近づいた時、それがドブネズミの群れと分かり、俺は半狂乱になって、来た道を全力疾走で戻る。俺はかなりのスピードで走った。その勢いで、さっきのコンビニの向かい側の壁を一気に駆け上がる様にして、柵を飛び越え、渡って来た鉄橋を夢中で走った。

鉄橋の真ん中あたりで振り返る余裕が戻り、俺は速度を落として立ち止まる。振り返るとドフネズミは見当たらなかった。脚に震えが来た。

そう、俺はドブネズミが苦手だ。何故だかそれは知っていた。しかし、理由も記憶も無い。

俺は少し落ち着き、また歩きだし、ゲップをしたらビールの泡とポテチを吐いた。ビールを飲んだ直後に全力疾走。無理もないが、すぐに身体は落ち着いた。その時、川からモーター音が聞こえてきた。見ると配送用の中型ドローンが、女をぶら下げて移動していた。その数は数十機。全てが都市に向かっていた。おそらく、俺が屍姦した女もだ。鉄橋の上から屍姦現場付近を見下ろしたが、それらしき人影が見当たらない。







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