ワイルドワールド
@kimura_masahito
第1話
目が覚めたら
草むらに横たわっていた。
雑草特有の匂いが鼻を刺す。
上半身を起こし、辺りを見回す。
一面草だらけだ。ゆっくりと立ち上がる。
どうやら河川敷らしい、数十メートル先に川が見え、その先には対岸、その先には土手があり、その向こうにビルが見えた。
振り返るとすぐ近くに土手がある。
(俺は何故ここに?ここは何処なのか?)
頭が汗ばんでいる。空は晴れている。日差しが強い。辺りをもう一度見渡してみると、数メートル先に、白いハイヒールを履いた女の足首が見えた。足首から上は、草に隠れて見えない。俺はゆっくり足首に向かって歩いた。
背の高い雑草を押し倒す様に、仰向けに寝そべる女。白いブラウスに黒いデニムのミニスカートから、生足が真っ直ぐに伸びていた。ボブカットの髪が大きくバラけている。目を見開き、口は半開き、整った顔立ちに白い肌が眩しい。瞳がブルーだった。でも、顔立ちは日本人のそれだ。カラコンか?
俺には、その女が生きているとは思えなかった。これは死体。それも新しい死体。辺りに人はいない。
俺は女の胸を掴んでみた。若い弾力がある巨乳だ。スカートを捲り上げる。白い下着が俺の欲情を刺激する。
とりあえず屍姦した。
姦ってみて、その女が生きていない事を確信する。屍姦は、多分初めてだ。たぶん?
ん?死姦の記憶どころか、俺は誰なんだ?何も思い出せない。頭の中に空洞が出来ているかの様な、言い知れぬ無力感の中で俺は白いマグマを女の奥深くに放ち、無力感から解放された。
俺はズボンを上げ、既に興味を失った女の死体に背を向け、一旦川に向かって歩いた。すると、また女が倒れていた。さっきのカラコン女に負けず劣らずの美女だったが、やはり生きていない。目を見開き、口を半開きにした美しい顔立ちだか、もう一度死姦する気にはならなかった。
川の岸辺にはテトラポットが乱立し、水面は白くキラキラと輝いていた。よく見ると、水面に女の体が浮いていた。一体、二体、三体…
どういう事だ?何がどうなっている?
動いていないから、たぶん死体だ。
あそこにも、その側にも、まばらに、色とりどりに浮かび漂う女達。
何が起きているのか?
考えても分からないので、俺は川に背をむけ、土手に向かって歩いた。
歩きながら、俺は自分のポケットを探る。何も入っていなかった。紺色のデニムに白いスニーカー、白いTシャツの上に水色の半袖シャツを、ボタンをとめず羽織っていた。
土手を登る足取りは軽い。
登り切った先にを見て、俺は唖然とした。焼け野原?黒焦げの街。ところどころに黒い煙が立ち昇っている。その風景がどこまでも続いていた。振り返ると対岸には普通の都市が見えている。土手の両側には陸橋が見える。俺は近い方の陸橋に向かった。
橋には線路がある。俺は柵を乗り越え、橋を歩き出す。対岸の街に向かって歩き出す。ビルの向こう側には入道雲がある。陽射しが熱い。喉が渇いた。空腹感もある。線路の上を、俺は器用に進みながら、対岸の街に着いた。
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