間章2

ヴアイデ陥落

 これはまだヴアイデが人間と魔族がともに生活していた時の事。

 そして、それが崩れた日の事だ。


 ◆

 

「いいか。今一番人間界に近い魔界の町に魔王が居るとの情報だ。チャンスは今のみだ。向こうはこちらの考えなどわかってもいないだろう。不意打ちだ。まず第1班は俺とともにヴアイデ近くで待機。国王軍の本隊がすぐに表れては向こうに怪しまれるから、第1班はギリギリまで待機だ。そして、第2班はヴアイデの町に攻撃をする。魔力の残で後々何かが残る可能性もあるが。戦争となればこちらの攻撃の跡があっても問題ない。大丈夫だ。町の人間はちゃんと避難させる手はずは整っている。第3班の攻撃後好きなように攻撃をしろ。第3班。第3班に選ばれたものはこれから大きな任務に就いてもらう。この作戦で一番重要だ。第2班より先に出発。そしてある程度魔界へと近づいたら。魔界への先制攻撃だ。特大の魔術をまずぶち込み即非難だ。逃げつつも攻撃できいるやつは攻撃をしてこい。いいか。これはヴアイデを魔族から取り戻すためだ。失敗は許されないぞ!」

「「「「おおっ!!」」」


 金髪の男性。べレンジャー・ベルナルドが叫ぶと、多くの国王軍の人間がこぶし。または武器を掲げながら答えた。


「第3班。行け!」

「「おおっ!」」


 ベレンジャーが再び声をあげると。国王軍の3つの塊のうち1つの塊が魔界へと向けて出発した。

 そしてすぐに第3班と言われていた集団の背中は小さくなり。消えた。


「第1班。第2班備えろ!第2班はフィンレーの合図を待て」

「「はっ!」」

「第1班は一度所定の位置まで戻るぞ!」

「「はっ!」」


 第3班が出発して少しすると第1班。べレンジャー率いる第1班は一度クリンゲルレーシュタットの方へと軍を下げる。その際ベレンジャーは息子。フィンレーに小声では話しかけた。


「いいか。昨日話した通りにするんだぞ」

「大丈夫です。お任せください。父上。リアムとも打ち合せ済みです」

「ふふっ。よし。全滅だぞ。逃すでないぞ?見ておるからな」


 そんな親子の会話を聞いた者は――いなかった。

  

 それから数時間もすると、ヴアイデの町は戦場と化した。それはそれは激しい戦いだった。国王軍と魔王軍が全面的に衝突したためだ。


 戦いに巻き込まれた中で、何が起こったのか全くわからなかったのは、ヴアイデとヴアイゼインゼルで生活をしていた一般人たちだろう。

 前触れもなく。突然人間または魔族から攻撃を受けたのだから。


 ★


 多くの人々が今は知らないことだが。戦いの始まりは魔界の町。ヴアイゼインゼルへの攻撃が始まりだった。唐突な人間界から攻撃を受けた魔界側は、大慌て――とはならなかった。

 何故ならこの時この町には魔王軍が居たからだ。定期的な見回りでこの町に魔王が来ていたのだ。

 それもあり始めの攻撃の数発こそ魔界側は受けたものの。その後の攻撃からは町を守ることができた。

 そして魔王軍は攻撃は人間からのものとすぐに判断し。そのまま軍をヴアイデの町へと進めた。

 

「いいか。最優先にするのはヴアイデで暮らす魔族を救出だ。すでに捕らわれているかもしれん。約束を破ったのだからな」


 指揮を執っていた魔王。テオドール・ヴンサンが叫ぶと、一気に魔王軍は仲間の救出のためにヴアイデの町へと向かいだす。


「アイザック!」


 するとテオドールは、一番信頼している部下の名前を叫ぶ。


「はいはいさー!います!こっちっす!」


 すると、どこからともなく元気な声だけ聞こえてくる。どうやら軍の中に紛れ込んで埋まっている様子だ。

 しかし、これはいつもの事のため。テオドールは声だけ聞くと叫んだ。


「アイザック!得意の爆破で人間を足止めしろ」

「はいはいさー。みんな俺についてこい!って、俺より先に行くな!」


 アイザックと呼ばれた魔族の姿は捉えることができなかったあその後魔王軍は一気にヴアイデの町へとなだれ込んだ。そして仲間の救出に――だったが。


 ★


「テオドール。おかしいぞ!一部の野郎たちだけじゃねー!」

「ぎゃああ」

「気を付けろ!あっちは準備万端で来てるぞ!」

「か。数が多すぎます!」


 はじめこそ魔王軍が国王軍の一部を押し返していた(一部の魔族を毛嫌いしている集団が攻撃してきたと判断。国王軍と判断したのは装備が国王軍だったため。しかし指揮するものが見えなかったので一部の反乱者と考えた)が。その後国王軍本隊が突然登場したのだった。


 ★


 前方から攻めてくる魔王軍。その前には第3班の姿もある。

 この状況は、ヴアイデに住む人間には魔王軍が攻めてきて、居た国王軍の一部が自分たちを守ってくれていると見えるだろうとフィンレーは町から離れたところで様子を見ていた。

 ちなみに数で圧倒的に多い国王軍なので、第3班だけでも魔王軍の足止めにはなっている。


「そろそろか――魔族が攻めてきたぞ!町を守れ!」


 フィンレー・ベルナルドの声を境に一気に戦況が変わった。

 フィンレーの声により国王軍の第2班が――攻撃を開始したのだ。そして、その後やって来たべレンジャー率いる第1班も第2班に加勢した。

 そこからはあっという間の事だった。


 ★


 魔王軍内は混乱していた。

 

「人間の野郎たち。仕組んだな!」

「アイザックさん。すでに――みんな殺されてます」

「くそっ。退け退け!」

 

 もともと数で多い国王軍がさらに数を急激に増やしたことで、準備もなく戦っていた魔王軍は一気に押し返されたのだった。


 ◆


 人間と魔族の戦い。第1次人魔戦争は人間の圧勝で終わった。

 しかし、多くのヴアイデの町の住民が殺され。また国王軍の第3班も全滅した。


「町をめちゃくちゃにした魔族を許すわけにはいかない!」

「ヴアイデは人間の土地!」

「俺の家族を返せ!」

「魔族を殺せ!」

「リアム様は正しかった!」


 そのため、戦争後の人間界はそのような声が日に日に大きくなり。さらに敵対することとなり悪い噂ばかり流れるようになったのだった。


 この日ヴアイデの町は、共存する町から。人間界のものになった。

 魔族が関わっていた場所はすべてが封鎖された(壊さなかったのは技術を盗むため。しかしこの時の人間の能力ではそれは思うように進まなかった)。

 ヴアイデの町の中にあった魔族の土地は完全に陥落したのだった。


 その後ヴアイデの町は、少し前に任命されていたリアム・アンルーという若い青年がまとめていくこととなった。


 なお、この戦い。人間界では魔族が攻めてきたと今でも語り継がれている。

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