2-4 真っ暗闇

 あたりが静まり返った真夜中の事。魔王城の離れのとある部屋から小声が漏れていた。


「――うん。ここが違うの?うーん……あれ?これははじめの術式が――?あれ?」


「ここがこうで――違う違う。えっと……確かこの術式は。確か昔何かの本に書いてあった気がするのに……わかんない。あー、ちゃんと見ておけばよかったー」


 机の上にはたくさんの紙が散らばっている。その紙にはいろいろな図形。文字が書かれている。

 この世界ではよく見る物。魔術を発動する際に用いる術式だ。

 本来は、頭の中で構築し発動するもの。書き出すのは魔術を知らない子供に教える際に行う程度。そもそも書き出すのが大変な作業なので、学校以外で書き出す人は人間界にも魔界にもほとんどいないだろう。


 ちなみに術式の構築が甘いと威力も落ちる。またミスがあれば発動しないこともある。しかし、基本何らかの現状は起こるはずだ。ちなみに紙に書いただけで魔術は発動しない。紙に書かれていることを頭の中で構築することで――魔術が発動する。

 ちなみに紙にいくら上級魔術が書かれていてもそのように構築される理由。知識がないと見ただけではもちいろん発動はしない。


 そして今。机に向かっている少女は、何かきっかけを――ということでいろいろ試す中。ここ最近は紙に術式を書くということを行っていたが。今日もなんの手応え無く唸っていた。

 けれど、少女は何かのきっかけを掴めば自分も魔術が使えるようになるのではないか。今は何も使えない。でも初級魔術でいいから使えるようになれば――と、記憶だけを頼りに、本など何もない自室で今日もこっそり1人で魔術の練習をしていたのだった。


 人知れず努力する少女。ルーナ・ヴンサン。17歳。

 なお、真夜中にこっそり魔術の勉強していることを隠せていると思っているのは――本人だけだったりする。

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