2-3 無防備

「つ、疲れた――」


 ルーナがいろいろと家事、掃除を頑張った?夕方の事。午前中に干した洗濯を片付けて今はルーナの部屋へと戻ってきたところだ。

 そして部屋に入るなり。ルーナはベッドに一直線。そして潰れた。

 

 そんな姿を見つつ。俺とソフィもルーナの部屋へと入る。

 ちなみに今の俺はルーナの後に付いているではなく。単に洗濯物を運んでいるだけだ。そしてソフィは真っ白な紙?を運んでいる。

 ソフィ曰く『紙とペンは絶対必要!とのご命令で』と先ほど言っていた。何に使うのかはわからないと言っていたが。あのソフィの表情は明らかに何かを知っている感じだったが。前には本人。ルーナも居たため聞いてない。

 

「ルーナ様は今まで家事など何もしたことが無かったので、今日は少し驚きました」

 

 ルーナの部屋の隅で、タオルなどを片付けていると、ソフィが話しかけてきた。


「その様ですね。いろいろな意味で驚きが多かったです」

「まあ、建物が吹き飛ばなくて安心しました」


 くすくすと笑いながら話すソフィ。ちなみに安堵の表情などはなく大変楽しんでいる様子だ。


「さすがにそこまで――でも、起こりそうで怖いですね」

「セルジオ様も早くもルーナ様のヤバさがわかってきましたか。でもこんなもんじゃありませんから」

「あはは……」

「ちなみにセルジオ様。ルーナ様の下着は一番下ですので確認しておきます?」

「触らないように先ほど言われましたので」

「寝ていますから大丈夫です」

「結構です」


 そうそうあと、ソフィのヤバさもわかってきていた俺だった。

 とにかく今日1日でいろいろ驚きがあった――おっと、勝手に1日の振り返りをしていたが。今はまだ夕方。

 この後は、夕食と入浴の時間が待っている。なので、ソフィから離れるという理由で俺は部屋に入るなりベッドにダイブ。そのままうつ伏せで伸びているルーナ(次期魔王様の面影は全くない)に声をかけた。

 

「あの。ルーナ様。夕食のご希望とか――」

「――すぅ。すぅ――」

「マジですか」


 先ほどソフィが寝ていると言っていたのは冗談かと思ったが。本当に寝ていた。それもそうか。起きていたら先ほどの会話の時に叫んでいそうだからな。それがなかったということは――。


「ということです。セルジオ様。いろいろ今のうちに確認しておきますか?」

「結構です」

「あらあら」

「ソフィさんもなかなか。えっと、とりあえず夕食は――」

「寝ているルーナ様を素っ裸にして体の上に料理でも並べますか?」

「――」


 ソフィ。なんか言い出だした。何をいきなり言い出すと呆気にとられる俺だったが。ソフィそこそこ真面目だったらしい。


「ルーナ様は寝るとすぐに暑いと言って無意識に脱ぎますからね。だから早めに隅々まで見ておき。耐性を――そして、冷たい料理でも並べておけばさすがに起きるでしょう。その際どんな反応をするか楽しみ楽しみ――」


 隣で増えてきな笑みを浮かべるソフィ。


「あの――ソフィさんって、まさかルーナ様より身分が上とかですか?」

「まさか。下ですよ。それはそれはかなり下です」

「……」


 わからん。ホントこの人もわからん。

 これは単に魔術が使える人の余裕なのか?などと俺が考えていると。


「恥ずかしい恥ずかしい言いつつ。こんな無防備に寝て」


 ソフィはそう言いながらルーナの着ていた黒のワンピースの裾をひらひらさせる。

 見えてはいないが――かなり際どく。ギリギリ。真っ白な太もも。足が露わになっている。って、何しているんですか!?と俺が言おうとした時。


 パチン。


「ふぎゃああ!?」


 ソフィ。まさかのルーナのお尻を叩いた。

 もちろんいきなりお尻を叩かれたルーナはすぐに飛び起きた。

 その際にパンツがちらっと見えてしまったのは――触れないでいいだろう。いや、黒に白だったからか良く見えてしまったというか――見なかったことにしよう。


「な。何するの!?いきなり」


 いきなりお尻を叩かれたルーナは目も覚めたのだろう。ソフィの方を少し恥ずかしそうに睨んでいる。

 

「無防備に寝てましたから叩かれたいのかと。にしても良い音がしましたね。今度は直で叩きましょうか?ぐーらた姫は肉付きもよろしいみたいですから」


 ソフィは楽しそうに。それはもう楽しそうにルーナを怒らせる。

 余談だが。ルーナの身体は細い。スタイルは間違いなく良い。今ソフィさんが肉付きが――などと言っている。それはない。いや、確かにお尻ならだが。って、余計なことは考えないでおこう。


「おかしいでしょ!あと、何を勝手に言ってくれているわけ?」

「食べて寝ての生活で太らないとでも?」

「あのね!そんなんこと――ないでしょ……」


 後半ルーナの声に自信がなくなっていったが――大丈夫ですよ。ホントスタイル良いですから。ソフィがからかっているだけです。と俺は心の中で言っておいた。


「自覚がおありの様子で。でも、叩かれたときに良い音が出るので、今のままでも良いのでは?私が楽しめます」

「なんでこれからも叩かれる流れなの!?」

「隙あれば」

「隙あれば、じゃない!私次期魔王だから!」


 全く魔王の雰囲気はないが――ということは絶対口にはできない。


「そもそもは、ルーナ様がいきなり寝ましたから」

「そ、それは――で、でも叩くっておかしいよね?私ソフィよりはるかに身分は上!これを私がお父様たちに伝えたら――」

「無理でしょう」

「なんでよ!」

「左遷されたのに?」

「だからそれは――」

「そもそも最近いつお話になりました?」

「……」


 ソフィに聞かれるとどんどん声が小さくなりそして返事するできなくなったルーナ様。どうやら最近はほとんど、または全く家族とも話していない様子だ。


「で、でも次期魔王――」

。ですね」


 何とか返事をしたルーナだったが。すぐに含みのある言い方をしたソフィにより黙る。


「ルーナ様はこのままだと、いつその座から落とされるか――」

「そ、そんなこと――――――ありそう」


 自覚あるんかい!と。心の中で突っ込む俺。いや、思っているなら少しくらい。行動をいや、何も知らない俺が何か言える立場ではないか。


「まあ、その場合。ルーナ様の命はないと思いますが」

「ちょ、ソフィ。さすがに怖いから。娘に手を出すとか――ない……」

「ないとお思いで?」

「……」


 とどめを刺したのか。完全にルーナが下を向いた。

 ソフィそこまで言う必要は……もしかして本当にそのような前兆があるのだろうか?と、近くで話を聞いていた俺は考えた。


「ルーナ様。もう一度言います。変わるなら今です」


 すると、ソフィが下を向くルーナを見つつ少し力の入った声で話した。


「――」


 それに対してルーナは顔をあげることなく。下を見たまましばしの沈黙となった。

ちなみに、沈黙を破ったのは。


 くぅぅぅ……。


「――はっ!?」


 気の抜けるような、空腹を知らせる音だった。

 俺も息をするのも忘れそうな状況で身体が硬くなり出していたが。一気に緊張が解けた。それはソフィもだったらしく呆れた表情に変わっていた。


「はぁ……ルーナ様。今は考えるよりお腹が空いていると。これはダメですね。セルジオ様。夕食をお願いします」

「あっ。はい」


 呆れ声でソフィに言われた俺は慌てて動き出す。


「ちょ、ちょっと待っ。今のは!私――」


 俺が動き出すと後ろからルーナが声をかけてきた。


「ルーナ様。恥ずかしがってもルーナ様しか今のはないです。セルジオ様お願いします」

「ソフィ!あー、私――だけど……うぅ」

「――セルジオ様。今のルーナ様はたくさん食べそうなので、今晩は少し多めでお願いします」

「は、はい」

「ソフィ!」


 それから俺は逃げるように調理場へ。

 なお俺が離れた後もルーナの部屋からは、いろいろな声が聞こえていた。


「ちょっと!ソフィ。普通は私を庇うとかないの?」

「別にいいじゃないですか。それくらいでセルジオ様に嫌われることはありません」

「いや、セルジオにじゃなくても――もし。もし他の人が居た場合とか。主を庇うものじゃないの?」

「ルーナ様を庇ってもですねー」

「ホント、クビにするわよ!?」

「どうぞどうぞ。魔王城まで1人で報告に行くことができるのなら」

「――」


 頭上からの会話はしばらく続いた。ちなみに俺は調理場で盗み聞き――してないが。たまたま聞こえてくる会話を聞きつつ俺はいろいろ材料をあさった結果。ボリュームのある夕食を完成させた。


「丼です」

「ドン?」

「どん?」


 先に言っておくと、2人の前に料理を出したら驚かれた。

 夕食に俺が作ったのは肉と野菜を炒めて、それを米の上に置いただけの丼。はじめはこんな料理でいいのかと思ったが。本当にこの建物に材料がなかったので仕方ない。

 本当は、肉と野菜炒めしかできないような状態だった。さすがにそれでは――だったが。材料を見ていると。なんと、米をたくさん見つけたのだ。何故に米だけたくさん――だったが。米を見つけたことでメニューが決定した。


 ご飯に少し炒めた時のたれをかければ、おかずが少なくとも、ご飯を多く食べれるだろう。あとそのあとお湯をかけて茶漬けもできる。ということで、丼になったのだった。


 はじめは食堂にて2人を戸惑わせることになったのだが――まずルーナが一口食べると。


「えっ。何これ――美味しい。えっ?この野菜と肉の下にあるの何?めっちゃ美味しんだけど――」


 ルーナは驚きつつさらに一口。それはそれは大変好評となり。一安心したのだった。ちなみに茶漬けまでしっかり2人は完食した。


 そして夕食後。とある驚愕の事実が1つ判明した。

 実は魔界ではお米を作っているのに、あまり食べる習慣がないのだと。これは驚きだった。俺の居た人間界では主食のように食べていたのに――。

 ソフィ曰く。お米は動物たちのエサとされていたらしい。それもあって魔王城でもかなり残ることがあり。この離れに良く送られて来るが。ここでも動物を飼ってはいないので、使わないため溜まっていたと。どうやらお米は魔界では食べ物扱いされていない様子だった。

 それもありお米は隅に追いやられていて、俺も朝などには気が付かなかったのだった。


 あと、もともと食べないということは、お米の食べ方も魔界の人は知らなかった様子で、その日の夜に、ソフィにお米の炊き方を教えたのだった。

 また魔王城離れには古くなっていたものもあるが。たくさんのお米があることが判明し。当面は魔王城離れでは、主食が米となるのだった。


 ★


 さらに余談。


「――だからなんで叩くの!」

「パンツ丸出しで寝転がっていたので叩いてよいのかと」

「見えてないから!あと叩くな!」

「真っ白でしたね」

「言うな!」

「ちなみに、お腹ポッコリ。かわいいですねー」

「ホント単に馬鹿にしてるだけでしょ!」

「はい!」

「表出ろ!」

「望むところです」

「――」

「さあさあルーナ様。行きましょう魔術をバチバチ交えましょう」

「――」


 どうやら満腹となったルーナは、夕食後そのまままた部屋で寝ていたらしく。ソフィと少しやりあったようで、調理場で片付けをしていた俺に筒抜けだった。

 その後2人が表、外に出たのかは――知らない。

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