2-2 雑用係

「では、セルジオ様。次はお掃除をお願いします」

「あっ、はい。もちろんです」


 食事後。俺はソフィに再度建物内の案内をしてもらった(広くはないので、すぐに終了。無事俺でも各部屋の場所は覚えることができた)。

 そして今は、今後俺が毎日することになるであろう魔王城の離れでの家事。掃除などに関してソフィに教えてもらっているところだ。

 ちなみにだが。場には本当に堅苦しさはない。ソフィもかなり軽い感じで話しかけてくれているため。どうやらここでは上下関係は全く気にしなくていい様子だ。現にソフィも気楽にと俺に何度も言ってくれている。そのため、俺もしばらくすると今の状況に慣れてきていた。そんな中で――なのだが。


 今この場には3人いる。1人は俺。もう1人はソフィ。そして――。


「ちょ。私も居るから。ちゃんと話に混ぜなさい」


 この場にはルーナもいた。本来なら俺がすることに首を突っ込む必要はなく。むしろどんどん命令していい立場のルーナなのだが――何故かこの場に居る。

 ちなみにソフィ曰く『大変珍しいことに。日中にルーナ様が起きている。明日は魔術の嵐が起こるかもしれないです』などと言っていたが―――魔術の嵐ってなんだろうか?ということもあったが。それより気になったのは、ルーナは一体どんな生活を今まで、していたのかということだ。日中に起きているだけで珍しいとか。夜行性なのか?などと思っていると。ソフィは少し面白がっている?様子で、ちょうどルーナに話しかけた。


「ルーナ様。大丈夫ですか?いつもならベッドに寝っ転がり掃除の妨害しかしないのに。頭でも打ちましたか?ふふっ」


 少し笑いをこらえながらソフィさんがルーナ様に話しかける。いや、最後笑いが漏れていた。


「もう!変なこと言わないで!あと笑わない」

「これは失礼。にしてもいつもはだらだらじゃないですか。この時間はベッドで爆睡――」

「それは――」


 ソフィに言われて、何も言えないルーナ。本当に普段はだらだららしい。この次期魔王様大丈夫なのだろうか?


「とにかく。セルジオ様。ルーナ様は無視して」

「無視するな!」

「お掃除をしてもらいます」

「――」


 ソフィ。本当にルーナを無視している。次期魔王のはずなのだが――いいのだろうか?


「まず洗濯。基本セルジオ様もここで生活しますので、ご自身の洗濯とルーナ様のものを一緒に洗ってください。私は自分で出来ますので大丈夫です」

「えっ?あっはい」

「ちょちょ、洗濯ってことは――」


 無視されつつも一緒に話を聞いていたルーナは少し慌てつつ。無理矢理俺と俺とソフィの間に割り込みながら話に入って来た。


「もちろん、今後ルーナ様の洋服。下着含む。はすべてセルジオ様が管理します」

「おかしいでしょ!?管理って言い方もおかしいし!」


 確かにおかしい気もする。洗濯に関しては、ソフィがしてもいいのでは?と思う俺だったが。俺は言われたことをするしか今の段階ではできない。雑用係になったんだし。でもこれ――やってもやらなくても命の危機では?


「ならルーナ様。お洗濯を覚えてみてはいかがでしょうか?」

「なっ!?う、うーん。や。やってやろうじゃない!」


 するとソフィはまるでこれを狙っていたかのように、唐突にそんなことを提案した。そしてあっさりルーナはそれに乗っかったのだった。そして、ルーナも含め。掃除などが始まったのだったが。ここからなかなか大変だった。


 簡単に言うと、無能2人が何かするというのは、普通の人より時間がかかる。さらにルーナに関しては、今まで全くやったことがないことをするので――。


「きゃっ!?」


 ルーナの悲鳴が相次いだ。

 洗濯をするにも俺とルーナがする場合。水を汲んできて――などと、魔術で水を操る人から見ればかなり作業が多いのだが――その途中。危なっかしい足取りだな。などとルーナを見ていると。バシャン。と。水をこぼすことが多発。

 さらに洗濯物を運ぶにしても――。


「――きゃっ!?」


 何もない廊下で躓き。ズシャン。と、洗濯物に埋まる。


 はっきり言って俺が洗濯にかかる時間が。魔術を使える人の2倍とすると。ルーナはさらに俺がするより2倍かかると言った感じで。さらに掃除を増やしていた。

 結局洗濯が終わったのは昼前。その際に何故か1人水浴びでもしたのか。濡れているルーナが居たのだが……。


「わ、私洗濯できるじゃん」


 干した洗濯を見て喜んでいたので、濡れていることに関しては触れなかった。

 

「ルーナ様。何をしたらそんなにずぶ濡れ――あっ。身体のラインを露わにしてセルジオ様を誘っていましたか。これは余計なことを言ってしまいましたね」

「ち、違うし!着替えてくるから!」

「着替えれますか?」

「子供か!」

「赤ちゃんでしょう」

「喧嘩売ってるでしょ!」

「はい」

「ぐぬぬぬぬっ……」

「ふふっ」


 なお、俺が触れなくてもここにはもう1人。ソフィがいるのでいろいろ言われていたが。


 ちなみに洗濯を終えた俺は、ルーナとソフィとは別行動。何やら言い争っている間に調理場へと行き昼食の準備をしていた。そして完成後、またしても2人に驚かれたのだった。ほんとここでは今までに何を食べてきたのか大変不思議になる俺だった。


 昼食の後は午前中にできなかった建物内の掃除となったのだが。これも大変だった。何故ならルーナの部屋の順番になった時『ここは私がするから』と、意気揚々に始めたのだが――『ルーナ様が掃除など爆発しますよ』と、小声でソフィが話しかけてきたので、嫌な予感がしつつも2人でルーナの様子を見ていると。


 水はこぼす。

 置物は壊す。

 危うく自分が窓から落ちかけると、それはそれは大変だった。

 そしてルーナの行った掃除の片付けをするという作業が増えたため。この日は夕方まで掃除となったのだ。


 とにかく今日1日だけで、ルーナのヤバさがいろいろと分かった俺だった。

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