エピローグ

再建

 さて、どのように説明したらいいのだろうか。

 人間界から魔界へとひょんなことで、やってくることになった俺。来るときは死ぬ覚悟をしていたはずだったが――気が付けば忙しく働く日々。そして――楽しい。良い日々を過ごしていた。

 こちらへと来たときは、まさかの次期魔王――訂正。今は――もう違うな。今は――ヴアイゼインゼルの長となっているルーナの下で働いている俺。

 そうそう、ルーナは次期魔王様ではなくなっているが。

 というか今ルーナは魔界から離れているとうか……違うな。魔界にある町。ヴアイゼインゼルには居るのだが。この町は少し前に国王軍。これはソフィが対処。いや、1人で対処したソフィ怖すぎるが。それは置いて起き。

 さらには魔王軍からも攻撃され。その際にルーナはこの町をほとんど1人で守った。いや、俺の周り強い人しかいない。


 なお、もちろんいきなり攻撃を仕掛けられたこともあり多くの犠牲はあった。けれど多くの町の人を助けることができ。ルーナの尋常ではない攻撃。ソフィ以上――と、思われる攻撃をした後。さすがに魔王軍も壊滅的な被害を受けたのか。すぐに撤退していき。今ヴアイゼインゼルは人間界。魔界からも独立したよな状態となっている。ある意味新たな町が出来つつあると言ってもいいかもしれない。人間界にも魔界にも属していない町。いや、新たな国が――産まれそうなのかもしれない。今のところはヴアイゼインゼルだが今後どうなるか。


 とにかくだ、ヴアイゼインゼルの人々はルーナに付いてきた。今ではルーナの指揮する下町の再建をしている。


 さすがにすべてを戻すのは難しいので、被害の少なかった魔王城の離れ近くにヴアイゼインゼルの新しい町を小さいが作っているところだ。

 本当はヴアイゼインゼルの人だけでは生活していくのが大変――という意見がはじめこそは確かにあった。

 しかし、今のところヴアイゼインゼルの人たちは裕福ではないが。衣食住に困る人を出すことなく町はまわっている。

 なぜそんなことになっているかというと――。


『いや、まさかルーナ様の魔術で作物がこれほど立派に育つとは』


 これは町を作り直しているときのソフィの言葉だ。


 攻撃を受けてボロボロになった町だったが。追い返す際のルーナの特大魔術。上級魔術の空の力はいろいろ含まれていたのか。町を緑にした。そして土壌の改善もしたのか。残っていた種などを植えれば……それはそれはあっという間に作物が――いやはやあれは初めて見た時驚きだったな。

 どうしてそんなことになっているのかはソフィもわからないらしいが。でもその結果町を立て直すことができた。

 おいしい食べ物が少なくてもあれば――みんな笑顔というやつだ。


 そして、こちらにはソフィという化けものも居るため。町自体の再建もソフィと一部の中級魔術を何とか使える人などで再建が順調に進んでいた。

 

 ――俺?相変わらず魔術が使えないため――今はルーナの命令の下雑用係をやっている。言われたことは何でもするという感じだな。言うこと聞かないと殺されそうだよ。

 そうそう、あと、日中は町の人がほとんど各自の作業。再建作業を行うため。どうしても子供たちが余ってしまうため魔王城の離れの一角で、子守係をしていることが多いかな。


『――実質ルーナ様も子供ですからね。セルジオ様は子守係でいいんじゃないですか?』


 そんなことをルーナが居ないところでソフィが言っていたが――本人が聞いたら魔術発動して大喧嘩が始まり。また町が壊れそうなので――本人に知られないようにしないといけない。

 なお、ソフィにそんなことを言われているルーナだったが。ちょくちょく俺が子守りをしているところに顔を出していた。それもあってソフィにそんなことを言われているのだと思うが――ルーナ。実は子供好きなのかもしれない。


 にしても、確かにルーナは上級魔術を使えるようになってから変わった。そして今も――。


「ルーナ様。町の外れに新しく畑を作ったんですが――」

「わかった。そこに雨を降らせればいいのね」

「お願いします」

「じゃあ早速案内して」

「ありがとうございます」


 町の人と協力して活動している。その光景は――まだルーナの下に来てからあまり時間が実は経っていない俺だが。『良い雰囲気だなぁ』と、思いつつ見ていた。


「――セルジオお兄ちゃん」


 すると、俺のところに――1つ。片方しか角のない魔族の女の子がやってきた。女の子は町が攻撃されたときにたまたま俺が助けた金髪碧眼の少女だ。

 今は町の人が分けてくれた白いワンピースを着ているので、あの時とはかなり雰囲気が違う。

 ちなみにソフィから聞いたことだが。やはりこの金髪碧眼の少女は人間と魔族のハーフの子ということらしい。

 あの後ソフィがいろいろ調べ教えてくれた。どのように調べたのかは――だが。とにかく珍しい子だ。


 そんな珍しい金髪碧眼の少女は、はじめの頃はみんなとは距離を取っていた。どうやら町が攻撃を受けた際に少し記憶が飛んだ様子もあり。過去のことはあまり覚えていない様子だった。それもあって他の人と接し方がわからず戸惑っていたみたいだった。

 また、町の人も珍しい姿の金髪碧眼の少女にどのように接したらいいか分からなかったのでギクシャクしたような変な感じがあったが。俺には何故か金髪碧眼の少女が懐いていたため。俺経由で少しずつ周りと馴染んでいっているところだ。


 そしてこの金髪碧眼の少女。実は中級魔術が使えることが最近判明。

 それも――多分だが得意分野が複数ありそうな感じなのだ。なので少しずついろいろ教えていくと大化けする可能性もあるとソフィが言っていた。

 ホントこの子は何者なのか。

 そうそう、あと何故金髪碧眼の少女と未だに言っているが。実はこの子自分の名前も何も覚えていなかったのだ。そしてどこの誰の子かもわからない。ソフィが調べているが――そう簡単にはわからないだろうと言っていた。町の人も誰一人として見たことがないと言っていた。

 そして名前を――だったが。下手に付けても、もしわかった時に――とか本人が思いだした時に混乱してしまうなど、それに今は町がまだバタバタしている。なので、町が落ち着いたら考えようということになり。今はみんながそれぞれいろいろな名前で呼んでる現状だ。基本『セルジオのとこの子』なんだがね。何故にそうなったか――なのだが。

 そりゃいつも俺の隣にいたかもだが。って、それを言うとここ最近ルーナも近くにいる。まあ懐いている様子は――だが。『ルーナのとこの子』でもいいような。いや、この場合。次期魔王……あれ?これはどうなる?わからないので、とりあえずはおいておこうか。

 って、なんかルーナと金髪碧眼の少女は――なんとも言えぬ視線のやり取りしていることがあるのだが。あれは……何をしているのか。でも俺には関係ないことか?こちらもわからない。


 話を戻して、ソフィの話によると。もしかすると人間界に居たのかもしれないと言っていたが――この町に居る人間は俺だけ。その俺は使い物にならないというか。ほとんど人間界の事も何も知らない。そもそも片方だけ角があれば人間界では嫌われるというか。生きていけるか微妙んところだが。上手に髪に隠れていたら――か。って、いまのところいろいろこの金髪碧眼の少女に関して考えたところでわかることはなかった。


 最後に報告がてらもう一つ。この金髪碧眼の少女は今俺と一緒に住んでいるというか。はじめ俺にしか懐いていなかったので、それもあって魔王城の離れで俺の部屋にて一緒に生活している。そして今のように日中はともに動いている

 にしても再度だが。金髪碧眼の少女と話していると、ルーナが何とも言えない表情で見てくることがあるのが気になるが――って、今は金髪碧眼の少女が何か声かけてきていたな。俺はやっと金髪碧眼の少女に返事をした。


「どうした?」

 

 ちなみに俺はこのことしばらく一緒に過ごしているが未だになんと呼んだらいいのか迷っていたりする。

 だからこの子に話す時は。金髪碧眼の少女に。君に話しているというアピールをするため目を見て話す――って感じで俺から呼ぶことはほとんどないという……なんかごめん。

 でもこの子はそれは全く気にしていない様子で、何故俺に懐いている。いや、何で懐いたのか謎だが――。


「ソフィさんが忙しいからルーナ様に付いて行ってって言ってた」

「えっ?」


 すると、建物の方から何か合図をしているソフィ。かなり忙しそうで――ソフィが見る先には、今まさにここを出発しようとしているルーナって、ルーナもこちらを見て手招きをしている。


「なるほど、ありがとう」

「えへへ」


 それから俺は急いで子供たちの相手を一緒にしてくれていたお爺ちゃんおばあちゃんにお願いしてルーナの元へと急いだ。

 ちなみに魔族のおじいちゃんおばあちゃん。年齢を聞くと人間のおじいちゃんおばあちゃんは赤ちゃんレベルである。いやはやこれも驚き――って、急いで俺はルーナの元へと向かった。


「お待たせしました」

「ソフィがね。忙しそうだったから」

『ルーナ様がセルジオ様と一緒に過ごし――』

「ソフィ!だまる!」


 ルーナと話していると、突然建物の方からソフィの声って、めっちゃ聞こえるじゃん。それなら金髪碧眼の少女に頼まなくても話せたのでは?って――この状況はルーナが希望した?などと思いつつ。ソフィに言い返していたルーナを見ると目が合った。


「あっ。いや、その――そ、そう、その子の事を知るためにね。セルジオ呼んだの」

「その子?」


 ふとルーナが俺の後ろを見たのでちらっと見ると、金髪碧眼の少女がピッタリ付いてきていた。


「あれ?待っててって言ったのに」

「私も行く」


 そしてルーナに向かって金髪碧眼の少女はそんなことを言った。


「ふふっ、良いわ。付いてこれるならどうぞ」


 すると、なぜか勝ち誇ったかのように言い出すルーナ。いやいや子供相手に何を――あれ?そういえば小さいから。あと行動がかわいいから子供と俺も思っていたが――この金髪碧眼の少女――いくつだろうか?


『セルジオ様ー。ルーナ様はその子にやきもちや――』

「そこ仕事しなさい!」


 するとまた建物から何かソフィが叫んでいたが。ルーナも叫んだため何を言ってきたのかはわからずだった。

 って、こんなところで話しているわけにはいかない。この町はまだまだやることがある。今からは畑だっけ?新しいところにルーナは行かないといけないので、言い合いを止めることにした。


「あの。ルーナ。先にやることを――」

「わ、わかってる。って、行くわよ」


 声をかけるとルーナが歩き出したので、俺は金髪碧眼の少女を抱っこして歩くことにした。まだ町のあちらこちらに穴があったり壊れている建物もあるからだ。すると――。


「……いいなー」


 なんかルーナから聞こえた気がした。気のせいかな?


 ちなみにその後ルーナは問題なく仕事をこなした。今日も半端ない魔術を使って――。


「ぬわああっ!?だから私こんな魔術使ってない!」


 なお、どうもここ最近のルーナ。勉強不足もあるのか。魔術の威力が予想より強くなることが多かった。でも今のところそれは良い方向というか。今も畑に雨を――だったのだが。威力が強く。また栄養?でもある雨が降ったのか。町の人からは驚きと感謝の声がすぐに飛んできたのだった。

 そういえば――金髪碧眼の少女が近くに居るときよくルーナの魔術がおかしくなるというか。いや、今はちょっと足場が悪く俺がルーナを支えていたから。って、多分ルーナの本当の力が目覚めようとしていると思うので――落ち着いたらまたしっかり勉強して、もらわないとか。などと思う俺だった。


 ◆


 そしてその日の夜。金髪碧眼の少女が寝た後の事。

 俺はお隣。ルーナの部屋に呼ばれていた。何事かと思ったら――。


「セルジオ。大変だと思うけどこれからも――そのよろしく」


 部屋に行くなりそんなことを言われたのだった。


「えっ、あっ、はい。というかもうここを離れた瞬間俺死にそうですし」

「死んじゃダメだからね?あっ。でも――私の傍から離れたら――ちょっといじめるかも」


 すると心配そう?というのか。でも楽しそう?にそんなことを言ってくるルーナだった。いやいや、いじめるって?と、俺が聞き返そうとした時別の声が聞こえてきた。


「はいはい。イチャイチャするならベッドの上で」

「ソフィは黙れ!」


 誰かと言えばソフィしかいないのだが。あの、金髪碧眼の少女が寝ていますから――と、俺が思った瞬間。


 コンコン。


「――セルジオお兄ちゃん?」


 開いていたドアをちゃんとノックしてから寝ぼけた感じの金髪碧眼の少女がルーナの部屋にやって来ていた。起きてしまったらしい。


「あらあら、ルーナ様が叫ぶから。あっ。複数プレイするんですか?まあまあセルジオ様。ルーナ様は一応ガキだから大丈夫だと思いますけど――」

「いやいや」

 

 ソフィよ何を言い出すか。小さい子の前で――って、そういえばこの金髪碧眼の少女って――何歳だ?見た目――ルーナより幼いと思うが。でもしっかりしていることもあるし……って、今はそれどころじゃないか。

 俺は金髪碧眼の少女の元へと向かい軽く両耳に手を当てたのだった。

 余計なことを聞かせないためにね。


「するかー!ってか。ソフィ今ガキって言ったでしょ!」

「ええ」

「あっさり認めやがった!私の方が上言ってるでしょうが」

「子供に負けそうで慌てている元次期魔王様の今は単なるちょっと魔術が使えるようになって調子に乗っているガキですね」

「よし。ソフィ。今から決闘しましょう」

「しましょう」

「しましょうじゃなくて!明日も忙しいんですから休みましょう。あと、町壊れるから」


 無能の俺が間に入るのは命の危機だが。本当に今は毎日が忙しいため休んでほしいの声をかけると――。


「ルーナ様。あれはセルジオ様からの夜のお誘いですよ?」


 ソフィがそんなことを言うので――あれだ。ルーナがまた騒ぎましたというやつだ。

 

 今日も明るい魔王城の離れだった。って、気が付いたら金髪碧眼の少女は俺にもたれるように寝ていたので、俺はそっと抱き上げて部屋へと運んだのだった。

 ルーナとソフィは……その後もなんやら言い合っていたな。

 ホント明るい場所だよ。


 俺は今後どうなるかわからないが――とりあえず今は、金髪碧眼の少女が寝れるように両耳に優しく手を当てておくのだった。




 第1部 了

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